頭の回転を速くする方法は、
脳の性能・環境・使い方の3つを揃えること
頭の回転を速くするには、脳の性能(コンディショニング)、作業する環境、脳と環境を使いこなすテクニックの3つを揃えることです。この3つが揃ったときに初めて、能力は最大化します。
動画では、頭の回転をF1の走るスピードに例えました。車が速く走るには、車の性能だけでなく、コースの環境とドライバーのテクニックも大事です。どんなに車の性能が良くても、コースが走りづらく、テクニックも微妙なら、本来のスペックは出し切れません。脳も同じです。
| F1でいうと | 脳でいうと | この記事で紹介すること |
|---|---|---|
| 車の性能 | 脳の性能・コンディショニング | サイクリック・サイング、水、スクワット、昼寝など |
| コースの環境 | 作業する環境 | 空気・音・温度・スマホ・視界の5つ |
| ドライバーのテクニック | 脳と環境の使い方 | 想起練習、メタ認知ラベリング、インキュベーション、タイムアタック |
性能の大前提は、睡眠・運動・食事の生活習慣です。よく眠り、よく運動して、健康的なものを食べる。ただ、本質的だからこそ効果が遅れてやってくるもので、今すぐ劇的に変わるものではありません。なので最後に回して、睡眠不足や運動不足の日、疲れている日でもできるものから書きます。
動画ではこのあと、サプリメントの話をしています。体質や持病によって向き不向きが分かれる話なので、この記事では取り上げません。
呼吸法とストレッチは、動画で僕が実演しています。動きを見たい方は動画を、どれから試すかを決めたい方はこの先の表を使ってください。
この記事は動画『【科学的根拠あり】30日続けると脳が変わる「11」の習慣』(4.6万回再生)をもとに構成しています。全編は29分です。
頭が回らないときは、
サイクリック・サイングを5分
頭がモヤモヤして回らないときは、サイクリック・サイングという呼吸法がおすすめです。息を吸って、もう1回吸って、口から長く吐く。
- 息を吸う
- 吸いきったところで、もう1回吸って肺をいっぱいにする
- 口からゆっくり、長く吐ききる
- これを5分続ける
ポイントは、吸ったあとにもう1回吸って、肺の中を空気でいっぱいにすることです。リラックスしたいときは、吐く息を長くするのが鉄則です。リラックスしようと思ってもなかなかできませんが、体は嘘をつかないので、呼吸から変えるのがおすすめです。逆に、ちょっとリラックスしすぎているなと感じるときは、吸う息のほうを長くします。
スタンフォード大学で、108人を集めて、3種類の呼吸法かマインドフルネス瞑想のどれかを1日5分、1か月やってもらった研究があります。吐く息を長くするサイクリック・サイングは、瞑想より気分の改善と呼吸数の低下が大きかったと報告されています(Balban et al., 2023)。ただし、この研究で測ったのは気分と呼吸数で、頭の回転そのものではありません。
緊張したときや、ストレスを抑えたいときにもおすすめです。1回やるだけでも、ちょっと落ち着いてくるのが分かると思います。魔法の呼吸法だと思って、まず5分試してみてください。
水・スクワット・昼寝。
コンディショニングは1つか2つ試せばいい
コンディショニングを整える方法は、呼吸のほかにもいくつかあります。今日、この中から1つか2つ試してみてください。これはやるかやらないかの差です。
| やること | やり方の目安 |
|---|---|
| 水を飲む | 1時間にコップ1杯ぐらい |
| 体を動かす | 疲れたら、その場でスクワット。バーピーでもいい |
| ストレッチ | 机で手を上に上げて交差し、横に倒す。息はしっかり吐く |
| 冷たい水で顔を洗う/ガムを噛む | どちらも、その場ですぐできる |
| 昼寝 | 20分。寝る前にコーヒーを飲む |
| NSDR | 10分ぐらい(5分でも15分でもいい)。ヨガニドラやボディスキャン瞑想 |
僕はスタンディングデスクで作業したりするのですが、疲れたなと思ったら、その場でスクワットをします。なんならバーピーもします。軽く運動して心拍数を上げるだけで、一瞬で頭が戻ってくることもあるので、とてもおすすめです。
疲れたときにいちばんおすすめなのは昼寝です。20分の昼寝で、寝る前にコーヒーを飲んでおくのがおすすめです。僕が昼寝をすすめた人からは、午後のパフォーマンスが上がった、集中力が戻ったと言ってもらうことが多いです。疲れにくい体をつくる習慣は、体力をつける習慣TOP20にまとめました。
明日の生産性が、もしかしたら1.25倍や1.3倍になるかもしれない。1.25倍なら、5時間かかる仕事が4時間で終わって、1時間浮きます。10時間働く人なら2時間です。
1日2時間浮けば、1か月で60時間、1年で720時間。1日8時間で割り戻すと90日、3か月分です。そういうことも普通に起こりうる話です。多くの人は、自分の本来の力を発揮できていません。だから1個ずつ取り入れてみてほしいと思っています。
頭の回転を上げる環境作りは5つ。
空気・音・温度・スマホ・視界
脳のスペックを高める2つ目は、環境作りです。気をつけたいのは、空気・音・温度・スマホ・視界の5つです。全部やらなくていいので、1個から取り入れてみてください。
空気:1時間に1回は換気する
うるさい場所や明るすぎる場所なら気づけますが、空気は目に見えないので、悪い部屋にそのままい続けてしまいます。
22人に、二酸化炭素の濃度を600・1,000・2,500ppmに変えた部屋で意思決定の課題をしてもらった研究があります。1,000ppmで9つの評価のうち6つ、2,500ppmで7つの成績が下がりました(Satish et al., 2012)。
ただ僕は、純粋な二酸化炭素だけでは語れないと思っています。人の呼気には、二酸化炭素以外のものも含まれているからです。実際、二酸化炭素だけを3,000ppmまで足した部屋では、成績に差が出なかったという研究があります。同じ研究で、人の体から出る物質と一緒に3,000ppmになった部屋では、眠気や考えにくさの訴えが増え、足し算の速さなどが落ちました(Zhang et al., 2017)。
なので、1時間に1回はしっかり換気するか、外の空気を吸いに行くのがおすすめです。ちょっと頭が回らないなと思ったら、会議中でも「ちょっと散歩でも行きましょうか」とやると、アイデアが降ってきたり、集中力が戻ったりします。
音:無音と集中BGMを使い分ける
集中したい作業でいちばん避けたいのは、自分が認識できる、理解できる音が飛んでくる環境です。ガヤガヤしているだけで、何を言っているか分からないならまだいい。カフェや職場のオープンスペースで隣の人の話が聞き取れると、そっちに気を持っていかれます。
僕は公認会計士試験のとき、イヤーマフを使ってとにかく無音でやっていました。無音は集中しやすい一方で、人によっては疲れるのが早くなります。なので僕は、無音でガッと集中するときと、もう少し長くしっかり集中したいときの集中BGMを使い分けています。うるさい場所では、ノイズキャンセリングのヘッドホンで集中BGMを流します。場所選びの話は集中できる場所を探す前に、避けたい5つの環境に書きました。
温度:ちょっと涼しいかなぐらい
温度は、暑すぎず寒すぎずが原則です。僕が大事にしているのは、ちょっと涼しいかなぐらいで作業することです。
スマホ:机の上に置かず、別の部屋へ
見ないようにするだけでは足りません。机の上にスマホを置いて作業するのは、めちゃくちゃ損をしています。
520人を3つのグループに分けて、記憶と推論の課題をしてもらった研究があります。スマホを机の上に伏せて置く、ポケットやかばんに入れる、別の部屋に置く、の3つです。別の部屋に置いた人は、机の上の人より成績が良く、ポケットやかばんの人は、どちらとも有意な差がありませんでした。2つ目の実験では、電源を切っても結果は変わりませんでした(Ward et al., 2017)。
なので、集中したいときのベストは、スマホを手元に置かないことです。隣の部屋に置く、誰かに預ける、押し入れにぶち込む、が理想です。1時間で終わるはずのものが、1時間10分、1時間20分かかる。それが積み重なって、自分の大事なことに使える時間が減ってしまいます。時間の使い方は命の使い方なので、こんなものに時間を奪われるのはもったいないです。
視界:集中したいときは狭く、アイデアがほしいときは広く
集中したいときは視界を狭くして、リラックスしたいときやアイデアを湧かせたいときは視界を広くします。僕は行き詰まったとき、一旦休憩するために目を閉じて情報を入れないようにするか、視界を広げます。開けた場所に行ったり、空を見たり。部屋の中なら、右目で部屋の右端を、左目で左端を見るように意識するだけでも、視野が広がります。
もう1つ、僕はこの数年でモニターを買って視点を上げてから、下を向いていたときより集中しやすくなりました。逆に、背中を丸めて下を見ていると、眠くなりやすかったりします。
どれもちょっとした気遣いですが、その差が半年、1年と積み重なると、自分が使えた時間は大きく変わります。1年を13か月で過ごすくらいは余裕です。
同じ脳みそでも、
使い方で出力は変わる。4つのテクニック
脳の性能と、走るコースの環境まで整えたら、最後はドライバーのテクニックです。同じ脳みそだったとしても、使い方を変えるだけで出力はまるっきり変わります。僕が本当に取り入れて変わったものを、4つ紹介します。
想起練習:見返す前に、一度思い出す
本を読んだとき、動画を見たとき、勉強したとき。覚えておきたいことがあると、普通は何回も見たり読んだりします。ただ、いちばんいいのは、読むのでも見るのでもなく、自分の頭で思い出すことです。これを想起練習(リトリーバル・プラクティス)と言います。
学生に文章を覚えてもらい、テストで思い出すグループと、読み直すグループに分けた研究があります。5分後のテストでは読み直したほうが良かったのに、2日後と1週間後のテストでは、思い出したグループのほうがはっきりよく覚えていました。自信は、読み直したグループのほうが高かったそうです(Roediger & Karpicke, 2006)。
僕は公認会計士試験の勉強中にこれを取り入れて、成績がまるっきり変わりました。教材はいりません。覚えなきゃいけないと思ったら、その場で一旦目を閉じて、何を覚えるんだったかを思い出します。会社帰りに駅まで歩いているときに思い出すのでもいい。本なら、見返す前に「この本の学びは何だったっけ、3つ挙げると何だろう」と一度思い出してから見ます。
メタ認知ラベリング:感情に名前をつける
イライラしているとき、やる気が出ないときに使うのが、メタ認知ラベリングです。正確に言うと、感情をコントロールするのではなく、どんな感情があっても行動をコントロールできるようにするテクニックです。やり方は、今の自分の感情に名前をつけるだけです。
イラッとしたときや機嫌が悪いときは、感情と自分がくっついています。僕の場合は、感情に名前をつけるか、感情を実況中継します。「あ、今自分はやる気が出なくて、勉強をやめたいと思っているんだね」と、第三者のように言ってあげる。そうすると思考と距離を取れて、感情と行動を切り分けて考えられるようになります。実況中継の練習は、3000時間勉強した僕の3つの脳ハックで詳しく書きました。
極論、どんな感情を持っていても、行動はある程度コントロールできます。もちろん、うつなど、体が本当に動かない状態は別です。
UCLAの研究では、否定的な感情を表す画像を見て、その画像が表す感情に名前をつけてもらいました。すると、ほかの見方をしたときより、扁桃体などの反応が小さくなりました。感情を言葉にすることで、感情の反応が和らぐ可能性がある、と著者たちは書いています(Lieberman et al., 2007)。
1回やってうまくいかなくても、まったく問題ありません。自己管理って確率論なので、やる気が出ないときに100%行動できる人はいません。10回中2回しか動けなかったのが、10回中4回、5回になったら、それでいいんです。打率が2割から5割に上がるのは大きな変化です。1回失敗しただけで手放すのは、もったいないです。
インキュベーション:煮詰まったら、一度離れる
インキュベーションは、煮詰まったら離れた方が進むことがある、というテクニックです。真面目な人ほど、答えが分からない、アイデアが出てこないときに、休憩を取らずに向き合い続けてしまいます。
具体的には、30分本気で考えて全然分からなかったら、5分瞑想するか散歩をするのがおすすめです。僕もYouTubeの企画を考えていて、途中で煮詰まることがよくあります。そこで睨めっこしていても、時間の無駄になることが多かったんです。なので、5分散歩に出かけるか、瞑想するか、その場で体を動かして、一旦課題から離れるようにしました。最初は勇気がいりますが、1回やってみると、確かにこっちのほうが効率的だと体感で分かると思います。
タイムアタック:時間を決めて、1つのことだけやる
テクニックの最後は、僕がいまだにずっとやっていて、この7〜8年でやってきた中でいちばん集中力が上がるんじゃないかと思っているものです。シングルタスクで、タイムアタックをします。
- 60分や30分など、自分の中で時間を決める
- その時間でやることを1個に絞る。「60分後にこの状態まで行く」というゴールを決める
- さっきの環境を整えて、そのタスクしかできない、話しかけられない状態を作る
- タイマーを押して、テストのようにどこまで行けるかタイムアタックする
ただ、毎回やると正直疲れてしまうので、1日の中でここぞというときに使うのがおすすめです。30分かかっていたものが20分で終わったり、1時間かかっていたものが45分で終わったりするので面白いですよ。集中に入るまでの条件は、フロー状態の入り方に書きました。
土台は睡眠・運動・食事と、
夢中になれるゴール
ここまでのコンディショニング、環境、脳の使い方を全部やっても、最後は睡眠・運動・食事です。ここが整っていなければ、本当の意味で最大限のパフォーマンスは出せません。
- 睡眠:QQRT。量・質・規則性・タイミングの4つを整える
- 運動:まずは有酸素運動。中くらいの強さの運動を週150分ぐらいから始める
- 食事:健康的なものを食べる
- そのほか:自然と触れる時間を増やす。マインドフルネスを取り入れる
運動の週150分は、僕がすすめている目安です。世界保健機関(WHO)の2020年のガイドラインも、すべての大人に、中くらいの強さの身体活動を週150〜300分すすめています(Bull et al., 2020)。マインドフルネスの始め方は瞑想のやり方は1日3分に、生活習慣の全体は人生が変わる習慣20選にまとめています。
もう1つ、本当の本当で言うと大事なのが目標設定です。自分が熱中できるゴールが見つかると、勝手にその方向に向かって走り出します。努力は夢中に敵わないので、夢中になれるゴールを見つけることも、すごく重要です。
よくある質問
寝不足の日は、どれから試せばいいですか。
サイクリック・サイングと昼寝です。呼吸法は、睡眠不足のときにやると結構いいと思っています。昼寝は、睡眠不足の日には欠かせません。
作業する部屋は、何度にすればいいですか。
22度か23度あたりから始めてみてください。眠気が出る、集中できないと思ったら、1度だけ下げてみてください。逆に寒くて不快なら、無理せずに上げるか、羽織るものを足してください。
集中BGMは、何を聞けばいいですか。
僕がよく紹介しているのは、『Weightless(ウェイトレス)』という曲や自然音です。ほかにもホワイトノイズなど色々あるので、何個か試して、自分に合うものを使い続けてみてください。
考えるのをやめて離れたら、戻ってこられなくなりませんか。
休憩から戻ってこられない、と言う人もいます。ただ、タイマーをかけて戻ってくるのであれば、一旦離れることで思考が発散されます。煮詰まっているときは、目の前のことしか見えなくなっているからです。
まとめ
頭の回転を速くする方法は、脳の性能・環境・使い方の3つを揃えることです。
- 頭が回らないときは、サイクリック・サイングを5分
- コンディショニングは、水・スクワット・昼寝などから1つか2つ
- 環境作りは、空気・音・温度・スマホ・視界のうち1個から
- 使い方は、想起練習、メタ認知ラベリング、インキュベーション。タイムアタックはここぞというときに
- 土台は睡眠・運動・食事と、夢中になれるゴール
呼吸法とストレッチの実演は、動画で見られます。
出典
- Balban MY, et al. "Brief structured respiration practices enhance mood and reduce physiological arousal." Cell Reports Medicine. 2023;4(1):100895. PubMed
- Satish U, et al. "Is CO2 an indoor pollutant? Direct effects of low-to-moderate CO2 concentrations on human decision-making performance." Environmental Health Perspectives. 2012;120(12):1671-1677. PubMed
- Zhang X, Wargocki P, Lian Z, Thyregod C. "Effects of exposure to carbon dioxide and bioeffluents on perceived air quality, self-assessed acute health symptoms, and cognitive performance." Indoor Air. 2017;27(1):47-64. PubMed
- Ward AF, Duke K, Gneezy A, Bos MW. "Brain Drain: The Mere Presence of One's Own Smartphone Reduces Available Cognitive Capacity." Journal of the Association for Consumer Research. 2017;2(2):140-154. DOI
- Roediger HL, Karpicke JD. "Test-enhanced learning: taking memory tests improves long-term retention." Psychological Science. 2006;17(3):249-255. PubMed
- Lieberman MD, et al. "Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli." Psychological Science. 2007;18(5):421-428. PubMed
- Bull FC, et al. "World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour." British Journal of Sports Medicine. 2020;54(24):1451-1462. PubMed