習慣・自己管理

自己管理ができない人へ。3000時間勉強した僕の3つの脳ハック

2026年9月16日更新 約11分で読めます 文・福井龍介(Ryu)/POTEX株式会社 代表取締役

やるべきことは分かっているのに、勉強や運動に手をつけられない。そんなとき、意志の強さだけに頼らず、行動を始めるためのコツを試してみてください。

昔の僕はきついことを先延ばしにしていました。1年で3000時間勉強して公認会計士試験に受かった僕が、実践してきた3つの脳ハックを紹介します。僕の動画『"超ハードワーク"を実現する3つの脳ハック術』を記事にしたものです。

自己管理ができないのは、
意志の強さの問題ではない

「意志が弱いから」と自分を責める前に、行動を始める方法を変えてみてください。僕が使ってきたのは、最初の一歩を小さくすること、過程を記録すること、思考と距離を取ることです。やるべきことを継続するには、コツがあります。

昔の僕は、きついことを先延ばしにしていました。毎日10時間勉強したら試験に受かる。1年間本気で英語をやれば話せるようになる。週5でジムに行けばムキムキになる。そんなことは分かっています。でも口で言うほど簡単じゃない。頑張っても結果が出ないとき、他のことで忙しいとき、今日はいいかと言ってやめてしまう。

その僕が1年で3000時間勉強して公認会計士試験に受かったり、スピーキング力が壊滅的なところから海外大に留学できたのには、いくつかのトリックがあります。意志力とか努力遺伝子とか、そんなのは関係ありません。

ゴールは、行動をコントロールできるようになることです。そのために、思考と感情をうまく飼いならす必要があります。僕らの行動は思考や感情から強い影響を受けますが、支配はされません。ここが今日いちばん伝えたいところです。

お腹が空いたからご飯を食べる。勉強がつらくなったから、携帯やテレビに逃げる。思考や感情が行動に影響するのは、こういう場面です。ただ、「逃げたい」と感じたら必ず逃げるしかない、というわけではありません。

この記事は動画『【完全版】”超ハードワーク”を実現する3つの脳ハック術』(115万回再生)をもとに構成しています。全編は16分です。

自己管理の脳ハック1。
最初の一歩を豆粒まで小さくする

きついことをやる直前、頭に浮かぶのは「嫌だな」「やるべきなのは分かってるけど面倒くさい」「明日でも大丈夫でしょ」あたりだと思います。このとき僕らは、無意識にタスクの中でいちばんきついところだけに目を向けています。行き詰まっている勉強、ベンチプレスでいちばん重い瞬間。よく考えれば全体のごく一部です。

実際には勉強がうまくいくこともあるし、やり切ったあとの爽快感もあります。それも知っているのに、直前には見えていません。きついところばかり想像してしまうからといって、自分を責めなくていいんです。

僕がいちばん手っ取り早いと感じるのが、ファーストステップを豆粒並みに小さくすることです。1時間勉強すると考える代わりに、座って参考書を開くだけ、1行読むだけ。ジムに行くのがきついなら、着替えるだけ、外に出るだけ、ジムの前まで歩くだけ。これならできそうだ、と思えるところまで小さくします。

それだけじゃ意味がないと思った方も、とりあえず1歩踏み出してみてください。1行だけ、3行だけ読んでみる。この段階で頭が働かなくてもかまいません。1回やったらやめてやるくらいの勢いで、豆粒レベルの一歩を出します。

大事なのは、最初のハードルを極端に下げることです。1時間も勉強しなきゃいけない、と無意識に思うから気が遠くなる。でも、ベンチプレス1セットだけ、ジムの前に行くだけ、参考書を開いて1行読むだけ。そう思ったら、いける気がしてきませんか。

僕もHIITというトレーニングが面倒になることがよくありました。それでも「最初の1セットだけやるんだ」と自分の頭に言い聞かせます。すると僕の脳みそでも、1セットだけならやってやるかと応じてくれる。そしてタイマーのスタートボタンさえ押してしまえば、あとはやるだけです。タイマーが進むままに2セット目、3セット目と、不思議なことにできてしまう。気がついたら全部終わっている、ということが日常茶飯事です。

最初の一歩を小さくする3つの例。勉強は参考書を開いて1行読む、ジムは着替える、HIITは最初の1セットだけ始める

やることは1つだけです。最初のハードルをとにかく下げる。僕は行動に移せたら、もう勝ったも同然だと感じています。一度手をつけると、そのまま続けられることがよくあるからです。やり切ったときは、気持ちよさを全身で感じてください。今日も積み上げた、という感覚を大切にします。

こんなにやらなきゃいけないと思うほど、やる気は下がる。一言でいうと圧倒されてしまうわけです。しかも、自分が勝手に作り上げた想像にです。僕は、想像していたほどきつくなかったと感じることがあります。「少しだけでいいんだ」と最初に思わせて、手をつけるハードルを越える。そこを狙ってください。

全部やろうとしなくていい、というのはそういう意味です。最初の1分だけでいい。思考は現実ではありません。ただのイメージであり、想像物です。

自己管理の脳ハック2。
積み上げ日記を毎日10分つける

2つ目が積み上げ日記です。3ステップあるので、飛ばさずに1つずつやってみてください。

ステップ1 理想像をはっきりさせる

この行動をしたらこんな理想の自分になれる、というワクワクする理想像をありありと想像します。できれば紙に書き出してください。頭の中だけで終わらせないことが大事です。

ステップ2 理想までの道のりを描く

理想が定まったら手段を考えます。理想を絵に描いた餅で終わらせないために、ここは必須です。どうやったらその理想が実現するのか、必要な行動を具体的に書き出します。ステップ1で設定した理想が大きすぎるなら、必ず分解してください。大ゴール、中ゴール、小ゴールに分けてもいいと思います。とりあえずこれをすれば理想に近づくだろう、という行動まで落とします。

公認会計士試験の合格を理想像に置き、そこまでに必要な行動と勉強スケジュールを階層で書き出した実例の画面
図2. 理想までの道のりを書き出した実例(動画『"超ハードワーク"を実現する3つの脳ハック術』より)

ステップ3 記録を取って過程を楽しむ

ここを飛ばす人がとても多いのですが、道のりが決まったら必ず記録を取ります。1日10分でかまいません。寝る前に、今日やるべきことはできたか、どこが成長したか、ゴールまでどれくらい近づいたか、スタートからゴールまでで今どの位置にいるか。これを主観的にでいいので書き出して、自分の成長を実感します。できているところに目を向けて、それを書き出すということです。

これをやらないと、行動の目的を見失い、やるべきことが分からなくなり、自分の成長が感じられなくなって、やる気が出ないというパターンにはまります。1つでも心当たりがあるなら、そこは伸びしろです。

きついことをやるからには目的があるはずなので、それを毎回強く意識してください。どんな自分になりたいのかを紙に書いて、見える位置に置いておく。僕も毎朝必ず見ているメモがあります。そして、その自分になるためには何をすればいいのかが、迷いのないレベルまで明確になっているか。そこができていないなら、やる気が落ちるのは当然です。やるべきことが分からなければ、もっと手軽に達成感を満たしてくれる携帯やSNSに集中力を持っていかれます。それは当たり前の話です。

大事なのは、いま自分は前に進んでいるんだと主観的に感じられるかどうかです。極論を言えば、客観的な結果として前に進んだと確認できていなくてもかまいません。ゴールに近づいているという感覚が、次もやろうと思う力になります。Mr.Childrenの『終わりなき旅』は名曲ですが、目標達成で終わりが見えない状態は、僕には毒になります。

筋肉や英語力やテストの点数のように、目に見えるもので可視化できたら最高です。ただ、そういうものばかりではありませんし、まだ結果が出ていない時期もあります。そんなときは過程に注目してください。今日はどんな行動をしたのか、どんな態度で過ごしたのか。少しでも積み上げられたなら、それは確実に進歩です。毎日書く形にする書式は、ジャーナリングのテンプレートの記事にまとめてあります。

自己管理の脳ハック3。
思考と距離を取る

3つ目が思考と距離を取ることです。正直、僕がいちばん伝えたいのはこの考え方です。難易度が高く、コツが要ります。僕もかなり練習をしました。5年ほど自己管理を試してきた中で、これが正直いちばん効果的でした。

言葉だけだと怪しく響くので、具体例で説明します。ダイエット中の人が「お菓子食べたい」という衝動に駆られたところを想像してください。距離を置けない人は、その思考を認識する間もなく、気づいたらお菓子に手が伸びています。あるいはお菓子がある場所に足が動いている。まあいいかと言って食べる。よくあることだと思います。

距離を置けている人はこうです。衝動が来たときに「あ、今私はお菓子を食べたいという衝動を感じているんだな」と認識します。これだけです。言い換えると自覚です。

何が違うのかと思うかもしれませんが、胸に手を当てて思い出してみてください。僕らが誘惑に負けたときは、ほとんどの場合この自覚のフェーズが抜けています。自覚なしで、無意識のうちに「今日は1回だけ」と正当化して、取るべきでない行動を取ってしまっている。

そして、自覚できた人だけに与えられるものがあります。それが選択肢です。お菓子を食べるか食べないか。当たり前のことですが、自覚しなければこの選択肢を持つことすらできません。もう食べる一択で、気づいたときには食べています。スマホも同じで、気づいたら通知に反応して30分も1時間も溶かしていた、というのは自覚ができていない状態です。

自覚できると、思いとどまるという選択肢が持てます。今の自分はだらけたいと思っているんだな、この勉強から逃げたくてスマホを触っているんだな。分かった。でも僕にはやらなきゃいけないことがあって、今は勉強のほうが大事な行動だ。最初はこれくらい口に出してかまいません。

僕は誘惑や衝動を一瞬の悪魔と呼んでいます。その悪魔がいなくなるまでの時間稼ぎをする、というイメージです。ただ、衝動が必ず数十秒で消えるという意味ではありません。まず気持ちを自覚して、すぐに行動へ移る前に立ち止まる。人間なので失敗はいくらでもありますが、自覚したうえでの失敗と、自覚できずに無意識にスマホを取ってダラダラ使った失敗では、質が違います。

もちろん、誘惑のない環境を作ること自体は大事です。ただ、ここで考えたいのはそこではありません。誘惑や思考は頭の中の想像であって、現実ではない。チョコを食べたいと思っても、その思考が行動を支配することはありません。影響は与えますが、支配はしない。頭に浮かんだ考えを書き出して確かめるやり方は、悪習慣をやめる方法の記事にまとめてあります。

これは発想の転換をしているだけです。普通、衝動や誘惑は悪いものとして扱われるので、どうやって排除するか、どうコントロールするかという話になりがちです。ただ、衝動そのものを取り払えるでしょうか。欲求は湧き上がってくるものなので、排除はほぼ不可能です。悪の排除は諦めます。湧き上がってくる衝動を素直に認めて、その衝動があっても理想の行動が取れるようになる。そちらのほうが現実的です。

自己管理の土台になる自覚は、
実況中継で鍛える

では自覚力はどう鍛えるのか。ここで試してほしいのが、感情を実況中継するというトレーニングです。

衝動が来たら実況を始めます。勉強がつらいと感じたら「私は今、勉強したくないと思っている。そして気晴らしに、本当は見たくもないSNSを見たいと今思っている」。ダイエット中にお菓子が食べたくなったら「私は今、お菓子を食べたいと思っている。甘いものが食べたいと私は思っている」。

思考と距離を取る流れ。衝動が来たら、したいと感じていると自覚し、スマホを見るか勉強を続けるかという行動を選ぶ

ポイントは、自分の感情を素直に認めたうえで、「〜と思っている」「〜したいと感じている」という語尾をつけることです。逆の例を考えると分かりやすくなります。「お菓子食べたい」「SNS見たい」「ゲームしたい」。これには自覚のかけらもありません。衝動に身を任せた操り人形のように、本当はやりたくもない行動に1時間も2時間も取られて、あとで自己嫌悪に襲われます。

やることは2つだけです。衝動が来たら、その気持ちを素直に認める。そのうえで「私は〜と思っている」と語尾をつけて、口に出すか頭の中で言ってみる。まずは1週間、いえ1日からでもかまいません。

何度かこのトレーニングをしていると、誘惑や衝動が来ても、それらの思考と距離を置いて理想の行動を続けられるように、徐々になっていきます。僕らは動物の中でも人間なので、自覚をすることができます。自覚できれば選択権が与えられる。10秒だけ、いえ5秒でもいいので、自分の思考と衝動に自覚的になってみてください。

この考え方は、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)と呼ばれる心理療法から来ています。ACTでは、思考や感情を無理に消すのではなく、それらとの関わり方や、自分が大切にする行動を扱います。詳しくは、下に挙げたACTの解説とレビュー論文を参照してください。

補足

僕は専門家ではありません。ここで紹介しているのは、僕が実践して自己管理に応用してきた練習です。心理療法による診断や治療を行う記事ではありません。

効果が感じられるまでには少し時間がかかるかもしれません。思考と距離を取るという考え方自体が抽象的なので、まず理解するところから始める必要があります。ピンとこないなら、1つ目と2つ目から試してもらってかまいません。

3つの脳ハックの使い分け

方法やること試す場面
1ファーストステップを豆粒まで小さくするやる前。手がつけられないとき
2積み上げ日記を毎日10分つけるやっている途中。進んでいる感じがしないとき
3思考と距離を取る(自覚する)衝動が来た瞬間。逃げそうなとき

僕にとって、1つ目がいちばんコスパが良くて取り組みやすく、3つ目がいちばん本質的で難しい方法でした。まずは取り組みやすい1つ目から試してみてください。

よくある質問

1行だけ読むことにも意味がありますか?

まず手をつけるハードルを下げる、という意味があります。「1回やったらやめてやる」くらいの気持ちで、1行だけ、3行だけ読んでみてください。この段階で頭が働かなくてもかまいません。僕もHIITでは「最初の1セットだけ」と言い聞かせて始め、2セット目、3セット目と続けられることがよくありました。

まだ目に見える成果がない日も書きますか?

そんな日も、過程に目を向けて書いてください。筋肉や英語力、テストの点数のような結果が、すぐに見えるとは限りません。今日はどんな行動をしたか、どんな態度で過ごしたか。少しでも積み上げられたところに目を向け、主観的な実感で記録します。

感情の実況中継は、声に出さないといけませんか?

頭の中で言うだけでもかまいません。衝動が来たら、その気持ちを素直に認めます。そのうえで「僕は今、〜と思っている」「〜したいと感じている」と語尾をつけて、口に出すか、頭の中で言ってみてください。

3つのうち、どれから始めればいいですか

取り組みやすい1つ目の「最初の一歩を豆粒まで小さくする」から試してみてください。3つ目の「思考と距離を取る」は、考え方を理解したり練習したりするのに時間がかかるかもしれません。まだピンとこなければ、1つ目と2つ目から始めてかまいません。

まとめ

自己管理ができないのは意志の問題ではない、というところから3つの脳ハックを見てきました。要点は3つです。

  • ファーストステップを豆粒まで小さくします。1行読む、着替える、ジムの前まで歩くなど、手をつけやすい行動から始めます。
  • 積み上げ日記を毎日10分つけます。理想像を決めて、道のりを描いて、過程を記録します。前に進んでいるという主観的な実感を大切にします。
  • 思考と距離を取ります。衝動を排除しようとせず、自覚します。そのうえで、どんな行動を取るかを選びます。

1つ朗報があるとすれば、いちばんきついのは最初だということです。人間には習慣化という機能が備わっているので、一度きついことが習慣になれば、どんどん楽になっていきます。まずは最初の一歩を豆粒まで小さくするところから始めてください。

出典

  1. Association for Contextual Behavioral Science「Acceptance and Commitment Therapy(ACT)」(ACTが扱う心理的柔軟性と価値に沿った行動)
  2. Hayes, S. C., Luoma, J. B., Bond, F. W., Masuda, A., & Lillis, J. (2006). Acceptance and Commitment Therapy: Model, processes and outcomes. Behaviour Research and Therapy. https://doi.org/10.1016/j.brat.2005.06.006

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【完全版】”超ハードワーク”を実現する3つの脳ハック術

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