「5分だけ」のつもりが、気づけば何十分もスマホを見ている。そんな悪習慣をやめたいときに、僕がすすめているのがABCDE日記です。その瞬間の考えを5項目に分けて書き出し、次の行動を決めます。
まずは1日5分から。この記事では、動画『やっと見つけた...「やめられない悪習慣」を断ち切るジャーナリング』(30.2万回再生)に沿って、書き方とスマホの記入例、続けるコツを紹介します。
悪習慣の直前に考えたことを書く
「今日こそやめよう」と決めたのに、気づけばまたスマホを見ている。その直前、自分にどんな言い訳をしていたでしょうか。今回のワークでは、その瞬間の考えをノートに書き出します。
やめたいと思っている場面を思い出してください。目の前にスマホがある。見てはいけないと思っていたけれど、5分だけなら大丈夫と自分に言って、結果として動画を40分も流し見してしまい、後悔と罪悪感に苛まれる。だいたいこんな感じではないでしょうか。
スマホを目の前に置かないようにする、遠ざける。それで解決することも大事です。ただ、そうは言ってもスマホを手放せないときはあります。そのときにいちばん大事なのは、「5分だけなら大丈夫」と自分で自分を正当化してしまうところです。ここが諸悪の根源なので、この歪んだ認知を書き換えます。
もちろん、1回書くだけで魔法のように何かが変わるわけではありません。紙とペンを使って思考を書き出し、次に同じ誘惑が来たときの選択を変えていきます。
この記事は動画『やっと見つけた...「やめられない悪習慣」を断ち切るジャーナリング』(30.2万回再生)をもとに構成しています。全編は20分です。
動画ではABCDEの図を見ながら、一緒に書き進められます。自分のペースで書きたい方は、この下の記入例を使ってみてください。
ABCDE日記の書き方と記入例
ABCDE日記は、悪習慣につながった出来事を、引き金・思考・結果・反論・新しい考えと行動の5項目で振り返る書き方です。やってしまったことを責めるだけで終わらせず、次はどうするかまで書きます。
まず縦にA、B、C、D、Eと書き、各項目の間を1行空けてください。5行ぴったりに収めるルールではありません。
A 引き金になった出来事
最後に誘惑に負けたときのことを思い出して、その引き金になった状況や出来事を書き出します。スマホなら「調べ物をするつもりが、刺激的なニュースタイトルが目に入った」。ダイエットなら「クレープ屋さんの前の甘い匂い」といった具合です。
B そのとき頭に浮かんだ考え
そのときに頭に浮かんだ考えを書き出します。「今ニュースを見ないと損だ」「時間はあるから少しぐらい見ても大丈夫」「今食べても問題ない、むしろストレス解消になる」。やめたい行動を今回はやってもいいと、自分で正当化しているはずです。
C 結果として生じた感情と行動
「30分の時間の浪費。後悔は10段階中8、罪悪感は10段階中9」のように、数値で表すのがおすすめです。いきなりたくさん書く必要はありません。ここまでのA・B・Cは、それぞれ1行ずつで大丈夫です。
D Bの思考への反論
ここからが本番です。Bに書いた考えに反論します。「5分だけのつもりで本当に終わったことがあるか。いつも5分以上かかるし、悪いときは30分以上だぞ。しかも大した情報は得られていないから、残るのは罪悪感だけじゃないか」。ダイエットなら「今朝の運動で消費した200キロカロリーが台なしじゃないか」。
頭の中で裁判を繰り広げるようなイメージで、冷静で合理的なツッコミを入れます。かかるコストやメリットとデメリットを並べて、理性的な自分を引き出すのがポイントです。
E 新しい考え方と、次の行動
最後に、新しい考え方と次にとる行動を書きます。「何も見ないほうが得だ。たまに有益なものもあるけれど、時間を失うデメリットのほうが大きい。だから次からは仕事中はロッカーの中にスマホを入れよう」。
Eは短くまとめることが重要です。できる方は新しい思考を1文に、行動もシンプルなものにしておきましょう。いまの例を短くすると「仕事中にニュースを見るのは無意味で、罪悪感が湧くだけ。次から職場に着いたらロッカーに携帯をしまう」になります。ダイエットなら「衝動に負けてカロリー爆弾を食べても満足することはない。次からは自分が事前に決めた日にだけ食べる」です。
Eで決めることには、もう1つコツがあります。我慢し続けなくて済むように、やっていいタイミングを先に決めておくことです。食べていい日を決めておかないと、ずっと我慢しなければいけない気がしてしまいます。「日曜の夜は好きなものを食べてオッケー。それ以外はルールを守る」と書いておけば、我慢の期限が見えます。
動画のスマホの例を、5項目の記入例にまとめました。自分の出来事に置き換えて書いてみてください。
表が見切れる場合は、横にスクロールして読めます。
| 項目 | 書くこと | 記入例(スマホ) |
|---|---|---|
| A | 引き金になった出来事 | 調べ物をするつもりが、刺激的なニュースタイトルが目に入った |
| B | 自動で湧き上がってきた思考 | 5分だけなら大丈夫。今見ないと損だ |
| C | 結果として生じた感情と行動 | 30分の浪費。後悔10段階中8、罪悪感10段階中9 |
| D | Bへの反論 | 5分で終わったことがない。残るのは罪悪感だけ |
| E | 新しい考えと次の行動 | 見ないほうが得。仕事中はロッカーにしまう |
書くタイミングは2通りあります。1つは衝動に負けた直後です。その場でメモ帳を出して書くと、記憶が新しいので詳細に書けます。時間が取れない場合は、夜など時間があるタイミングにまとめて書いても大丈夫です。1日の終わりに、その日の衝動に負けたエピソードをABCDEに沿って書くのが、多くの人が取り組みやすいと思います。
まずは1日1回を目安に、2週間試してみてください。毎日1回なら14回です。動画のまとめでは「2週間で10回から20回」、最後には「まずは20回」とも話しています。回数は取り組む目安で、決まった回数だけで変わるという約束ではありません。
1回の時間は5分から。余裕があれば10分から15分取ります。別の目的でも書いてみたい方は、僕が使っている5つのジャーナリングのテンプレートも参考にしてください。
悪習慣につながる考えに気づく
僕がこのワークをすすめる理由は2つあります。衝動に対する反応を変えていけることと、悪習慣のパターンが分かることです。まず、1つ目から話します。
衝動に流される前に、別の選択肢を持つ
ABCDEを続けると、夜にスマホをいじりたいなという衝動が来ても、「いや、これ朝見たほうがいいよね。ていうか朝で十分だよね」という新しい考えが自動で浮かびやすくなります。Bで自分の偏った思考と正当化に気づき、DとEで合理的な新しい考えを書き出しているからです。
無意識にやってしまう行動にも同じことが言えます。その場では気づけないので、あとからABCDEを使って「なんでそうなったのか」を言語化して、パターンを自覚していきます。この振り返りを繰り返すと、同じような状況に直面したときに「あ、これ前も同じことで後悔しているな」と気づきやすくなります。無意識の衝動に対して気づきを挟む、いわゆるメタ認知が育ってきた証拠です。衝動に流されるのではなく、自分で選べるようになります。
動画では、認知行動療法(CBT)の考え方とあわせてこのワークを紹介しました。Bに書く自動思考を、Dで実際の経験と照らして考え直していきます。
補足
国立精神・神経医療研究センターの解説では、CBTは考え方の偏りを現実に照らして見直す心理療法と説明されています。この記事のノートワークは、医療として行われる治療の代わりではありません。
僕は、頭の中で考えるより紙に書く
書かなくても頭で考えるだけでいいのではないか、と思う方もいると思います。実際、僕も疑いながら書くことを始めました。ただ、これはかなり違います。頭の中だけで考えても、なかなかうまくいきません。頭の中だけでできる人もいるでしょうし、それで効果がある方もいると思いますが、最初は書いて客観的に眺めることで、自分の歪んだ認知に気づきやすくなります。僕は圧倒的に紙に書くことが好きで、実際に行動が変わりました。1回で変わるわけではありません。繰り返すことで着実に変わってきます。
悪習慣にはまるパターンを探す
2つ目の理由は、自分が悪習慣にはまるパターンに気づけることです。いつものパターンを、少しかっこつけてホットスポットと呼ばせてください。書いたメモを見返すと、対策のヒントになります。
ホットスポットを見つけるために、書いたメモを見返して注目するポイントが4つあります。
- 時間 いつ悪習慣にはまったのか
- 場所 どこではまったのか
- 直前の行動 その直前に何をしていたか
- 直前の感情と状態 どんな気分だったか。体調やそのほかの状態はどうだったか
例を出すとこうなります。「22時30分、ベッドで、スマホでLINEを返信していた。退屈は10段階中6、不安は10段階中4、眠い、お腹が空いた」。ここまで書くと、スマホを触るパターンが分かります。何回もやっていれば、だいたいこのパターンだなというものが見えてきます。
悪習慣にはたいてい何らかのパターンがあるので、特定できれば、あとはそのパターンに合わせた対策をするだけです。いまの例なら「夜は疲れていて誘惑に負けやすい時間帯だから、帰宅したら真っ先に返信を済ませて、終わり次第スマホの電源を切ることを習慣にしよう。そうすれば寝室には持ち込まなくなるはずだ。とりあえず3日試して様子を見よう」という具合です。
対策が決まったら、いったん試してみます。いまの例なら3日です。最初からうまくいくと決めつけず、どうなったかも振り返ります。
そしてうまくいったら、その結果もノートに書き止めておきましょう。いまの例なら「携帯を置いて深く眠ることができた」「睡眠を削ることなく、翌朝からエネルギー全開で動けた」「時間を有効活用して、軽く運動とストレッチまでできた」といったところです。ここで、スマホではなく運動をするとこんなに達成感と気持ちよさが湧いてくるんだ、という報酬を受け取ることになります。
書き方は「スマホではなく運動することで、私はより人生の満足度が上がり、充実感が上がると実感した」という形でかまいません。我慢したことだけでなく、置き換えた行動で良かったことも書き残します。
悪習慣の代わりの行動を決める
ここで、悪習慣を断ち切るうえで重要なポイントがあります。対策をif-thenルールの公式に落とし込むことと、落とし込んだルールを守れたかどうかを毎日1分でチェックすることです。
if-thenルールのやり方は簡単で、「もし〜したら〜する」という公式に当てはめて行動ルールを設定するだけです。「もし家に帰ってきたら、スマホの電源を切って押し入れにしまう」「もし食事を食べ終わったら、そのまま散歩に出かける」。AしたらBする、というシンプルなつなぎを意識して、1つずつ行動をつなげていきます。
「この状況になったら、この行動をする」とあらかじめ結びつける計画は、実行意図として研究されています。ゴルヴィツァーの1999年の論文と、2006年のメタ分析で、その考え方が説明されています。
「スマホを見ない」で終わらず、いつ何をするかまで決めます。帰宅したとき、食事が終わったときなど、行動を始める合図とセットにしてください。
そしてルールを守れているかどうかをチェックします。いちばん簡単なのが習慣トラッカーです。縦にルールや習慣を書き出し、横に日付を取ります。あとは毎日できたかどうかを1分でチェックするだけです。やるかやらないかの違いなので、忙しくても1分は必ず取れるはずです。最低限、チェックだけはやってみてください。
図は1週間の記入例です。「帰宅したらスマホをしまう」と決め、できた日にチェックを付けています。
さらにできる方は、習慣トラッカーを信頼できる人に開示して、達成状況を報告します。週に1回、15分から30分ほどの時間を使います。振り返るのは3つだけです。今週できたことは何か。できなかったことは何か。次はどうしたらできるか。あわせて、良かったことを続けるために何をするかも書き出しておきます。
1人ではなかなか続かない人が多いので、誰かと振り返る形にしておくと進みます。相手は家族でも同僚でもかまいません。毎日の記録を見せる相手が1人いるだけで、チェックを飛ばしにくくなります。
悪習慣を変える取り組みを続けるコツ
続けるために、まずはいつどこで書くかを決めてください。「寝る前の10分をブロックして書く」という形です。例外をなくして、最短で習慣にしていきます。そのために、今日はできないかもと思ったら、短くてもいいので書いてください。5分だけ書いて習慣トラッカーを1分つけるだけ、深掘りは翌日、それで大丈夫です。
いつまで取り組むかの目安も決めておきます。山頂にいつ到達するか分からなければ、歩くモチベーションは湧きにくいですよね。動画では2〜3週間、15〜20回を目安として話しました。まずは20回を目指してみてください。ただし、これは全員に効果が出るまでの日数や回数ではありません。
それでも1人で続かないなら、人に見せてください。アカウンタビリティという言葉でよく紹介していますが、1人では続けられないなら信頼できる人との約束に変えるというのは鉄則です。最初は外からの力でも、やればやるほど習慣になって、外圧がなくてもできるようになることはあります。
もう1つ、置き換えがうまくいかないケースがあります。if-thenルールで新しい行動を決めても続かない理由はいろいろありますが、1つは、置き換えた行動があまり魅力的ではないというものです。置き換え先を選ぶときは、同じニーズを満たすこと、準備が楽で手間がかからないこと、そして感情が上向くこと。この3つを意識してください。
僕の場合は、お菓子をやめたいときにナッツを取り入れました。口が寂しくて食べたくなる気持ちをナッツが満たしてくれますし、小分けの25グラムのものを箱買いして手軽に食べられるようにしました。食べたあとは普通においしいですし、健康的で最高だというポジティブな感情につながります。おかげで、かれこれ6年ぐらい続く習慣になっています。
よくある質問
そのとき何を考えていたか、思い出せません
無意識にやってしまっていて、そのときの思考を覚えていない場合は、2クッション挟みます。先に「手が勝手に動いてしまった」という体の反応を書き、次にその瞬間の記憶をワンシーンで言語化します。「赤字の大きな文字が目に飛び込んできた」のように。そのうえで「その映像を見たときの自分は、心の中で何と言っていたか」と問いかけてください。
紙のノートではなく、スマホに書いてもいいですか
紙とペンがおすすめですが、スマホのメモアプリなど、思考を書き出せるものなら何でもかまいません。今すぐメモできなければ、先に説明を読んで、あとから取り組んでも大丈夫です。
20回書いても変わりませんでした
20回は取り組む目安で、改善が保証される回数ではありません。1人では続けられないなら、信頼できる人との約束に変えることをすすめています。また、置き換えた行動が魅力的でない場合もあります。同じニーズを満たすか、準備が楽か、感情が上向くかを振り返ってみてください。
お酒やたばこ、ゲームのように依存性が強いものにも同じやり方でいいですか
この日記を依存症の治療の代わりにはしないでください。自分ではやめられず、生活や仕事に支障がある場合は、医療機関や専門の相談窓口に相談してください。厚生労働省は、依存症の相談先として保健所や精神保健福祉センターなどを案内しています。
まとめ
悪習慣をやめるために、我慢するだけでなく、自分の考えを書き出してみてください。ABCDE日記で取り組むことは3つです。
- ABCDEの5項目を書きます。1日5分から始めて、余裕があれば10分から15分使います。
- メモを見返して、時間・場所・直前の行動・感情と状態から、悪習慣にはまるパターンを探します。
- そのパターンに合わせて「もし〜したら〜する」と対策を決め、毎日1分、できたかを振り返ります。
まずはABCDE日記を20回やってみてください。1日できない日があっても気にせず、明日から再開しましょう。
出典
- 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター「認知行動療法(CBT)とは」(認知療法・認知行動療法の定義と自動思考)
- 厚生労働省「依存症についてもっと知りたい方へ」(FAQで案内している相談先)
- Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist. https://doi.org/10.1037/0003-066X.54.7.493
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1