勉強や仕事でフロー状態を目指すなら、具体的な目標、迅速なフィードバック、ギリギリの難易度をそろえることから始めてください。僕が公認会計士試験の勉強で取り入れていた方法です。
フロー状態とは、目の前のことに没頭して我を忘れ、時間の感覚が変わる状態です。作業に集中し、普段なら気になる自分のことを意識しなくなる。1時間が10分のように過ぎたと感じることもあり、取り組んでいること自体が報酬になります。
この記事は、僕の動画『【8時間が3時間に】やるべきことが爆速で終わる"超集中"ハック術』(16.2万回再生)を記事にしたものです。3つの条件の使い方と、毎回フローに入ろうとしない考え方を説明します。
フロー状態に入るために、
3つの条件をそろえる
フロー状態に入るために僕が実践しているのは、具体的な目標を決めること、フィードバックがすぐ返ってくること、難易度をギリギリのラインに置くことです。勉強でも仕事でも、この3つを組み合わせます。
僕も公認会計士試験の勉強をしているとき、フローにこだわりました。その結果、1年ちょっとの勉強で合格できました。いまも仕事のあらゆる場面で取り入れています。
フローの研究で有名なのは、ミハイ・チクセントミハイという心理学者です。『フロー体験 喜びの現象学』『フロー体験入門』『フロー体験とグッドビジネス』などの著者でもあります。
Nakamuraとチクセントミハイの『The Concept of Flow』でも、明確な目標、進み具合が分かる迅速なフィードバック、能力を生かせる挑戦が条件として挙げられています。
細かく分けると、どこから取り組めばいいのか迷うかもしれません。そこで、僕が勉強や仕事でどう使っているのかを、この3つに絞って説明します。3つはつながっているので、まずは全部読んでから実践してみてください。
この記事は動画『【8時間が3時間に】やるべきことが爆速で終わる"超集中"ハック術』(16.2万回再生)をもとに構成しています。全編は18分です。
フローに入る条件1。
タスクごとに
具体的な目標を決める
具体的な目標というと、公認会計士に合格する、ベンチプレスの重量を上げる、といった大きいものを思い浮かべると思います。それはそれで必要ですが、ここではもう1歩踏み込んで、毎回のタスクの前に目標を決める話をします。
公認会計士を目指す人が、行きつけのスターバックスに行って勉強を始めるところを想像してください。レジでコーヒーを買って、席について、すぐ勉強を始める。これだと少しもったいないんです。
僕は1分から2分だけ時間を取って、そのタスクの目標を洗い出すようにしていました。今から自分は何の論点を何分でどこまで勉強するのか。このセッションで何を理解するのか。このタスクの目的は何なのか。
YouTubeの原稿を書くときなら、何分で何割書き終えるのか。どんな出来なら、この時間は有意義だったと言えるのか。それを紙に書き出して、時間がないときは頭の中でイメージして、そこからストップウォッチを押します。
たとえば「60分でイントロと本文の半分を書き切る。細かいところは後で直すから、とにかくリサーチと自分の経験を出すことに専念する」。これくらいの粒度です。複雑に考えず、やることをはっきりさせるのが大事です。
逆に、タイマーもかけず目的も曖昧なまま始めた場合、僕の生産性はおそらく半分以下になります。目標が明確でない状態でスマホの通知が目に入れば、無意識にそちらへ流れてしまうからです。
この感覚は、本番の試験でラスト10分になったときのあれに似ています。ふと時計を見ると残り10分。このままだと終わらないかもしれない。でも頑張れば終わるかもしれない。あのときの集中を、自分で作りにいくということです。
フローに入る条件2。
終わったらすぐフィードバックする
2つ目は、1で決めた目標の結果がすぐ返ってくることです。試験なら10分後に解き切れたかどうかが分かります。同じことを、普段のタスクでも作ります。
やり方は、タスクが終わったら振り返りの時間を取るだけです。僕は受験生のとき、タスクが終わるごとに自分の集中力を4段階で評価していました。
- 全く集中できなかった
- 平均的だった
- かなり集中できた
- フロー並みに集中できた
これは主観でかまいませんし、3段階でも5段階でも問題ありません。あわせて、決めた目標を達成できたかどうかも記録します。指定した時間内にできたらチャレンジ成功、できなかったらチャレンジ失敗。白黒がはっきりする形にしておくのがポイントです。
勉強や仕事は、なかなかフィードバックが返ってきません。今日やった勉強の結果が分かるのは、1ヶ月後か3ヶ月後か、1年後の試験です。そこまで待てないので、タスクが終わるごとに結果が出る仕組みを自分で作ります。チャレンジ成功か失敗かがすぐに分かると、ゲームみたいで面白いんです。
記録を続ける形にする方法は、習慣トラッカーの記事にまとめてあります。
フローに入る条件3。
難易度をギリギリのラインに置く
3つ目は、難易度が達成できるかできないかのギリギリのラインであることです。3つの中でいちばん欠かせない要素だと思っています。
どんなに具体的な目標を決めて、フィードバックが返る環境を作っても、タスクが難しすぎたり簡単すぎたりすれば、フローには届きません。
極端な例を出します。大人や中学生が「アンパンマンと一緒にアルファベットを学ぼう」「しまじろうと一緒にひらがなを学ぼう」という教材に没頭するのは難しいですよね。逆に「アインシュタインの相対性理論を2分で誰にでも分かるように説明してください」と言われたら、少なくとも僕はやる気を失って気絶します。
さきほどの試験でラスト10分の話も同じです。集中できるのは、ギリギリ行けるかもと思えたときです。絶対に無理だと思ったら、逆に集中力は落ちます。
これは口で言うのは簡単ですが、実践すると意外と難しい。「30分で教科書は何ページ読めますか」と聞かれて、すぐ答えられる人は少ないと思います。自分の処理速度を知らないままでは、適切な難易度を決められません。
だから順番があります。まず条件1と条件2を先にやる。タスクの前に目標を書き、終わったらフィードバックする。たとえば「この教科書なら1時間で50ページ読める」「朝なら70ページ、夜は疲れているから30ページ」という具合に、そのときの自分のレベルを把握します。
最初は面倒に感じるかもしれませんが、ざっくりでかまいません。目標設定とフィードバックを続けて、自分にとって最適な難易度を探してください。
| 条件 | 実際にやること | いつ |
|---|---|---|
| 1 具体的な目標 | 何を何分でどこまでやるか、1〜2分で書き出す。時間がないときは頭の中で決める | タスクを始める前 |
| 2 迅速なフィードバック | 集中力を4段階で評価し、チャレンジ成功か失敗かを記録する | タスクが終わった直後 |
| 3 ギリギリの難易度 | 1と2を続けて自分の処理速度を知り、ギリギリ達成できる目標を決める | 次の目標を決めるとき |
フローを邪魔するものを取り払い、
入ることを期待しすぎない
ここから2つ、落とし穴の話をします。
1つ目は、フローを邪魔するものを取り払うことです。集中力を最大化したいなら、1日1時間だけでもいいので、何にも邪魔されない空間と時間を作ってください。誰にも話しかけられず、スマホは手元から離れたところに置いて、無音か自然音を聞きながら、ただ目の前のタスクをやり切る。1時間後のフィードバックでチャレンジ成功を取りにいくために没頭する、という形です。
チャレンジ成功を取りにいくために、どんな環境があれば目の前のことに没頭できるのか。自分なりに工夫してみてください。
2つ目が、意外と大事です。フローに入ることを期待しすぎないでください。
正直なところ、この方法を実践すれば、全員が毎回フローに入れるわけではありません。
僕自身、集中力を4段階で評価していましたが、いちばん上の「フロー並みに集中できた」に届くことは、そんなに多くありません。僕にとってフローは奇跡の瞬間で、1日に何度も入れるものではありませんでした。
ただ、ここからが大事です。僕が目指してほしいのは、集中力の平均値を上げることです。毎回フローに入ることだけを成功とせず、「平均的だった」「かなり集中できた」を取れる割合にも目を向けてください。
入れるか入れないかの2択で考えないでください。集中力はグラデーションのようなものです。今より少しでも高い位置に行くことを目指す。そういうイメージで積み上げてください。
もう1つ知っておいてほしいことがあります。タスクを始めて20分くらい、頭がうまく働かないことがあっても、すぐに諦めないでください。僕は、脳にもウォーミングアップの時間が必要だと考えています。そこでやめてしまうのか、もう少し続けてみるのか。大事なのは、フローに入れないだけでやめないことです。失敗しても大丈夫です。僕も毎日失敗しています。
休憩時間はマインドフルネスで、
目の前のことに集中する
3つを実践してもなかなか入れない、あるいはもっと極めたいという場合に、休憩時間にやってほしいことがあります。マインドフルネスです。
僕がマインドフルネスで大事にしているのは、今この瞬間に意識を向けることです。目の前のことへの没頭という点で、フローにもつながります。呼吸に意識を向ける瞑想が基本的で実践しやすいので、やったことがなければそこから始めるのをおすすめします。
座ってやるのが苦手なら、やり方を変えてかまいません。こういうものもマインドフルネスです。
- 街を歩いているときに、聞こえてくる音だけに集中する
- 毎回のご飯で、料理の味と匂いと食感に全集中して味わう
- シャワーを浴びているとき、水が頭や体に当たる感覚に意識を向ける
集中する練習を、日常にも取り入れてみてください。衝動が来たときに自覚する練習は、自己管理の記事でも書いています。
僕の場合は、スキーをやっているときにフローに入りやすくなりました。カナダの大学に留学していたとき、ウィスラーという有名なスキー場に1度だけ行ったことがあります。初心者のくせにスピードを出して降りていくので、集中しないと転んで大怪我をするし、人に当たるかもしれない。崖から落ちる可能性もなくはない。そこで、勝手にフローを疑似体験することができました。
これは1つの例です。マインドフルネスと聞いて、瞑想が苦手だからと手を出せなくても、目の前のことに集中する練習なら日常生活に取り入れられると思います。
もう1つ、僕が大事にしているのがゲーミフィケーション、つまりゲーム化です。人がゲームにはまる特性を、仕事やビジネス、勉強にも応用する考え方です。ゲームのように勉強に没頭できたら、努力を続けるのも楽になると思います。
よくある質問
タスクの前に目標を書く1〜2分が惜しく感じます
時間がないときは、頭の中で目標をイメージしてからストップウォッチを押す形でもかまいません。僕もそうしています。何を何分でどこまでやるのかを、曖昧なまま始めないことが大事です。
集中力の評価は4段階でないとだめですか
4段階にこだわらなくて大丈夫です。3段階でも5段階でも問題ありません。僕は4段階で評価していましたが、集中できたかどうかは自分の主観でかまいません。
朝と夜で同じ目標を使ってもいいですか
そのときの自分のレベルに合わせて考えてみてください。同じ教科書でも、朝と仕事のあとの夜では、読めるページ数が違うことがあります。目標と結果を振り返りながら、自分にとってギリギリのラインを探すのがおすすめです。
4段階のうち、いつも1か2しか付きません
低い評価だけで、向いていないと決めつけないでください。僕も、いちばん上の「フロー並みに集中できた」に届くことは多くありませんでした。フローに入れたかどうかの2択ではなく、今より少し集中できる状態を目指して、目標と結果を振り返ってみてください。
まとめ
フロー状態に入るための3つの条件と、そこにたどり着くまでの現実を見てきました。要点は3つです。
- タスクの前に1〜2分かけて、何をどこまで何分でやるかを決め、ストップウォッチを押します。
- 終わったら集中力を4段階で評価し、チャレンジ成功か失敗かを確かめます。
- これを続けて自分のレベルを把握し、難易度をギリギリのラインに置きます。
最後に、いちばん伝えたいことを書きます。僕にとってフローに入ることは、生産性が上がって結果が出やすくなるという話だけではありません。結果までの過程そのものが、幸せなものに変わります。
僕は中学生の頃、慶應に入れさえすれば人生が変わると思っていました。海外に留学できたらどれだけ幸せかと想像しました。公認会計士試験に受かれば将来の不安が消えるだろうと思っていました。でも違いました。達成しても、上には上がいます。お金や学歴や結果ばかりを追いかけても、相対の世界からは抜けられません。
それでも自己管理や目標達成の話を続けているのは、自分を磨いているという状態そのものが、いちばん幸せだからです。重量が伸びること、収入が増えること、試験に受かること。全部うれしいのですが、極論すればそれらは副産物です。いま自分は価値ある目標に進んでいる、というその状態にこそ本質的な価値があります。
フロー状態が特別なのは、それ自体が報酬になっているところです。僕が伝えたいのは、たとえ目標が叶わなかったとしても、そこへ向かっている過程に価値があるということです。
ただ、結果を出す前に「大事なのは結果じゃない」と言っても、説得力がないですよね。言い訳に聞こえてしまうかもしれません。僕自身、もっと大きな結果を出す必要があると思っています。プロセスや、目標とは直接関係のない人間関係や健康の価値を本当の意味で感じられるようになるためにも、今のところは結果にこだわろうと思っています。
まずは次のタスクの前に目標を決めて、ストップウォッチを押してください。終わったら集中力と達成できたかどうかを振り返る。僕も毎日できることを積み上げます。一緒に、自分の人生に没頭していきましょう。
出典
- Nakamura, J., & Csikszentmihalyi, M. (2014). The Concept of Flow. In Flow and the Foundations of Positive Psychology. https://doi.org/10.1007/978-94-017-9088-8_16