携帯のサイレントモードのように、関係ない雑音をオフにして、やるべきことに集中する。これを人生に当てはめると、目標の扱い方が変わります。結論から言うと、目標はまず人に言わないところから始めて、行動まで見届けてくれる人や変化を受け入れてくれる人には伝えたほうがいいです。人に知られると実行が減ったという研究と、会計士試験の途中で周りに話すのをやめた僕の経験から、言わない相手と伝える相手を2種類ずつ紹介します。この記事は、動画『この「3ステップ」で1年を過ごしたら人生が変わりました。』(3.3万回再生)を記事化したものです。
目標は人に言わない。誰に言うかを分けて、3ステップで進める
目標は、まず人に言わないところから始めるのがおすすめです。ただし全員に黙るのではなく、行動と結果まで見届けてくれる人には伝えたほうがいいです。
新年の抱負や今月の目標を周りに宣言すると、「すごいね」「頑張って」と言われるか、「お前には無理だよ」と言われるかのどちらかです。どちらだったとしても、やるべきことを先延ばしにしやすくなります。
僕がいちばん参考にしたのは、英語圏で500万回以上再生されている「姿を消して生まれ変わる方法」という動画です。成果を出す人は一時的に連絡が取れなくなり、1人で淡々と行動して、結果を出して元の世界に帰ってくる。最初は僕も怪しいと思いましたが、中身はとてもまっとうでした。
進め方は3ステップです。
- 姿を消す。目標を人に言わず、伝える相手を選ぶ
- 陰で努力する。やるべきことを淡々とやり続ける
- 再び姿を現す。ただし、過剰な承認欲求は消えている
この記事は動画『この「3ステップ」で1年を過ごしたら人生が変わりました。』(3.3万回)をもとに構成しています。全編は23分です。
動画では、会計士試験を目指していたころの写真を見せながら、当時の話をしています。記事では、言わない相手と伝える相手を表にまとめ、動画で触れた研究の原典も確認して載せました。
目標を言わない相手は2種類、伝えたほうがいい相手も2種類
目標を言わないほうがいいのは、頭ごなしに否定してくる人と、悪気なく現状維持をさせようとする人です。伝えたほうがいいのは、行動と結果まで見届けてくれる人と、変化を受け入れてくれる人です。
目標を紙に書く、壁に貼る、毎朝書き出すのはかまいません。習慣トラッカーや日記で記録を取るのは、むしろやったほうがいいです。共有しないのは、これから書く条件に当てはまらない人だけです。
元の動画は「誰にも言うな」の一点張りでした。ただ、僕がいろいろな文献を読んできた中では、伝えてはいけない人と、むしろ伝えるべき人ははっきり分かれます。
言わない1. 頭ごなしに否定してくる人
「起業したい」「公認会計士に受かりたい」「英語を話せるようになりたい」と言ったときに、「そんなの無理でしょ」「できなかったらどうするの」と返してくる人です。ドリームキラーと呼ばれたりもします。自分ならできそうだという自己効力感を下げてしまうので、こういう人には言わないでください。
言わない2. 悪気なく現状維持をさせようとする人
厄介なのはこちらです。昔の友達の中で誰かが頑張り始めると、「なんでそんなに頑張るの」「いいじゃん、遊ぼうよ」「そんなのやっても意味ないじゃん」と言ってくる人が必ずいます。
悪気はありません。奥底にあるのは、変わってほしくない、昔のままでいてほしいという気持ちです。本当に自分を変えたいなら、こういうコミュニティからは一定の期間、距離を取ることが大事です。
伝える1. 行動と結果まで見届けてくれる人
目標を共有して終わりではなく、毎週の行動や期限に対してコミットできているかを見てくれる。お互いに進捗を報告し合い、「できるよ」「一緒に頑張ろう」と声をかけてくれる。こういう人には、積極的に開示したほうがむしろいい場合が多いです。
僕らは、自分との約束はなかなか守らないのに、人との約束は守ります。朝6時に起きると自分1人で決めても、僕もすぐ破ります。でも人と朝に会う約束をしていたら、起きる確率はぐっと上がりますよね。アカウンタビリティと呼ばれる考え方で、やる気が出ない日に動く方法の記事でも書いています。
伝える2. 変化を受け入れてくれる人
現状維持の圧力を無意識にかけてくる人には、気をつけてください。人格が悪いわけではなく、価値観の違いです。今たまたま向かっている方向が違うだけなので、縁を切る必要はありません。いい関係は続けられます。ただ、目標については言う必要がない、ということです。
| 相手 | 見分け方 | 目標を |
|---|---|---|
| 頭ごなしに否定してくる人 | 「そんなの無理でしょ」と返してくる | 言わない |
| 悪気なく現状維持をさせようとする人 | 「いいじゃん、遊ぼうよ」と誘ってくる | 言わない。一定の期間は距離を取る |
| 行動と結果まで見届けてくれる人 | 毎週の行動と期限まで見てくれる | 伝えたほうがいい場合が多い |
| 変化を受け入れてくれる人 | 頑張り始めても「なんでそんなに頑張るの」と言ってこない | 伝えたほうがいい |
目標を宣言すると満足してしまうことがある。見届けてくれる人がいないうちは言わない
目標を宣言すると、かえって達成から遠ざかることがあります。「それいいね」「すごいじゃん」と言われるだけで脳が満足してしまい、行動の量が落ちたり、先延ばしにしたりするからです。
「すごいね」と言われるだけで、達成した気になる
「来年起業しようと思ってて」「留学に行きたくて」と話していて、1年経っても2年経っても同じことを言っている人はいませんか。その人が悪いというより、この罠にはまっているだけのことがあります。「すごいね」と言われると、もう達成したような錯覚が起きる。やるべきことは泥臭いので、宣言しただけで満足している状態では前に進めません。
研究では、思い入れが強い人だけ、知られると実行が減っていた
これからやると決めたことを人に知られると、実行が減ったという研究があります(Gollwitzer et al., 2009)。4つの実験のうち1つ目では、ドイツの大学で心理学を学ぶ学生49人が、翌週の勉強の目標を2つ書きました。一方は書いた目標を実験者に読まれ、もう一方は「このページは手違いなので捨てます」と言われています。
1週間後、目標を誰にも見られなかったほうが、実行した日数が多くなりました(平均2.70日と1.92日)。別の実験では、この傾向が出たのは、その道に進むことへの思い入れが強い人だけでした。人に知られると、なりたい自分にもう近づいたような感覚が早く来てしまう、と論文は説明しています。聞き手が実行を確かめやすい形で伝えればこの影響を避けられるかどうかは、著者も今後の課題に挙げています。
伝えたほうがいい人がまだいないなら、うちに秘めておく
伝えたほうがいい人がどうしても周りにいない、環境もまだ作っていない。その場合は、まずは誰にも言わず、うちに秘めておきましょう。これがステップ1の「姿を消す」です。
誰も見ていないので、失敗しても怖くありません。陰ながら頑張っている自分っていいな、と思えるのも立派なアイデンティティです。
僕は、ここまでの話を全部実践して180度変わりました。ここからは僕の意見ですが、自分の実力を高めない限り、人脈を広げてもギブできるものが少なすぎます。まずは自分を高める。そのために姿を消して、淡々とやるべきことを積み上げる期間は絶対に必要だと思っています。
陰で努力する間に、僕が外せない6つのこと
ステップ2の「陰で努力する」で大事なポイントは6つあります。元の動画では紹介されておらず、僕自身が絶対に外せないと思っているものです。目標の立て方そのものは目標の立て方をまとめた記事で、達成までの進め方は目標達成の方法の記事で扱うので、ここでは一言ずつにとどめます。
| ポイント | 動画での一言 | |
|---|---|---|
| 1 | 具体的な目標を決める | 3ヶ月以内にTOEIC800点、半年以内に10kg痩せる、のように達成できたか測れる定量の目標 |
| 2 | 定性の目標も立てる | 達成した場面を、映画のワンシーンのようにイメージする |
| 3 | 人生の領域でバランスを取る | 仕事やお金だけでなく、人間関係・健康・趣味・住環境の重要度を自分で決める |
| 4 | 目標を絞る | 二兎を追う者は一兎をも得ず。全部やりたいなら全部でもいい。キャパオーバーで進捗が落ちたら、捨てるか絞る |
| 5 | 誘惑を排除する | スマホや不必要な飲み会など、ゴールに関係ないものを期間を決めて断ち切る |
| 6 | 仕組みを作る | 自分以外の力で前に進む環境(上りエスカレーター)、ワンタイムアクション、週1回の振り返り |
2つ目の定性の目標は、僕にとって外せないものでした。18歳のころの僕は、ニューヨークのウォールストリートで多国籍のメンバーと英語で議論している自分を思い描いて、ワクワクしていました。数字には落とせなくても、そのワクワクが夢中にさせてくれると思っています。
4つ目の「目標を絞る」では、会計士試験に1年とちょっとで受かるスケジュールを組んだとき、英語の勉強や人間関係を最小限にして、当時やっていた野球もやめました。捨て方は大事なものを捨てる時間の作り方、領域の選び方は7領域から習慣を選ぶ記事、振り返りはThink Dayのやり方に書いています。
結果が出たら姿を現していい。ただし承認のためにやらない
ステップ3は「再び姿を現す」です。最初は結果を見せていいんです。TOEIC900点を取った、起業した、痩せた、とSNSに上げてください。純粋に喜んでもらえるのは、とてもいいことです。
ただ、他人の承認のためにやることは本当に虚しいです。どんなにびっくりされても、すごいねと言われても、言われれば言われるほど空虚になる瞬間が必ず来ます。
人は、手に入れたものを当たり前だと感じるようになるからです。快楽のトレッドミルとも言われます。健康のありがたみは風邪を引いたときに気づいても、1週間もすれば忘れてしまう。年収1000万円も英語も、すぐに当たり前になります。
ステップ1と2をやった人には、ある変化が起きます。目標に挑戦し、成長し、熱中している、そのプロセスそのものにいちばんの価値があると気づき始めるんです。人に認められなくても、決めたことをやりきる自分、朝早く起きて積み上げている自分はかっこいいし、誇れます。
自分の行動は、24時間365日すべて自分が見ています。誠実な行動を続ければ自分への信頼が上がり、自己効力感につながります。外面の報酬から内面の報酬にシフトすると、サイレントモードをオンにしたまま、周りに「すごいだろう」と言う必要が一切なくなる。これが本当の意味での生まれ変わりだと思います。
会計士試験の1年、僕が目標を話した相手
僕が最初に本気で自分を変えなきゃと思って取り組んだのは、簿記の勉強と、その後の公認会計士試験です。このとき、僕は完全に姿を消していました。
ただ、最初は違いました。「公認会計士に受かって、そのあと海外の大学に留学したい」と、周りにめっちゃ言っていたんです。すごいねと承認されて、でも行動できない。この記事で書いた罠に、まさにはまっていました。大人から「それは無理でしょ」「できなかったときのことを考えたほうがいい」とも言われました。やめたほうがいいと何回言われたかわかりません。
そういう人には、途中から話さなくなりました。1人で家にこもって、勝手に勉強し始めたんです。身近な人で唯一話していたのは、同じく大学2年生で受かろうと頑張っていた友人です。一緒に1年で受かるぞと目標を宣言し合って、行動までお互いに監視し合っていました。
関係ない情報も一切シャットアウトしていたので、この1年だけ海外に行っていたような状態でした。当時テレビによく出ていたりんごちゃんを知らなくて、家族に驚かれたくらいです。
野球も、英語も、いらない人間関係も全部捨てました。同じ会計士の受験生とつながって、スタディプラスというアプリでお互いの勉強時間を見せ合い、結果と行動をセットで宣言して、やらなかったら本当に恥ずかしいと思う場所を作りました。
会計士試験のあとに始めた英語も、同じ方法です。TOEFLで95点くらいまで取って海外の大学に留学し、TOEICでも900点を取りました。YouTubeは顔を出すのが恥ずかしくてなかなか始められず、カナダに留学するその初日に始めました。行きの飛行機で1本目の動画を編集していたのを、今でも覚えています。物理的に姿を消していたので、人の目を気にせずにやりたいことができました。
起業したときも、集客から商品を作って提供するところまで、基本的には1人で1年半ほどやっていました。正直、周りにはほとんど理解されていなかったと思います。
全員に黙らなくていい。1人で頑張る期間をつくる
注意してほしいのは、全員に対して黙るという極端な話ではないことです。大事なのは見極め、つまり誰に言うかです。
メンターやコーチなど、なりたい自分をすでに体現している人からのフィードバックは必要不可欠です。その人たちの意見は素直に聞いて取り入れてください。
孤独にはデメリットもあります。ずっと1人で頑張るのではなく、1人で頑張るフェーズや期間が必要、というニュアンスで捉えてください。仲間を作ることも、僕は全く悪いことではないと思っています。今はむしろ仲間とずっと仕事をしていて、いいときも悪いときも共有できる人がいるのは本当に幸せなことだと感じています。
目標の達成に関係がある仲間なら、伝えていい。そうではない人には言う必要がない。それが「姿を消す」の意味です。環境を大きく変えようとすると、今のコミュニティから「何やってるの」という逆風が必ず吹きます。やるかどうかは価値観しだいですが、そういうときにこの3ステップを思い出してみてください。
よくある質問
見届けてくれる人が周りにいないときは、どこで探せばいいですか
付き合う人を変えるか、一度の行動で環境を作ってしまうのがおすすめです。同じ試験を受ける人や同じ目標の人がいるコミュニティに入る、メンターやコーチをつけてフィードバックをもらう、などの方法があります。
まとめ
- 目標は、まず人に言わないところから始める。紙に書くのはかまわないし、記録はむしろ取ったほうがいい
- 頭ごなしに否定する人と、悪気なく現状維持をさせようとする人には言わない
- 行動と結果まで見届けてくれる人、変化を受け入れてくれる人には伝えたほうがいい場合が多い。周りにいなくて環境もまだ作っていなければ、まずは誰にも言わない
- 結果が出たら姿を現していい。ただし承認のためではなく、プロセスに価値を置く
- 全員に黙る必要はない。メンターやコーチの声は聞き、1人で頑張る期間をつくる
会計士試験の写真や当時の話は、動画のほうで詳しく話しています。
参考資料
- Gollwitzer, P. M., Sheeran, P., Michalski, V., & Seifert, A. E. (2009). When Intentions Go Public: Does Social Reality Widen the Intention-Behavior Gap? Psychological Science, 20(5), 612-618. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02336.x