通知を切っても、アプリを消しても、気づくとまたスマホを見ている。そんな人に向けて、まず応急処置4つで距離を取り、それでも戻るなら5つのステップに進む、という順番で書きました。
この記事は、僕の動画『【毎日"80分"削減】スマホ中毒で「無駄な時間」を過ごす人へ。』(9.7万回再生)を記事化したものです。公認会計士の受験期に、毎日スマホの誘惑と戦いながら続けた対策を、動画の順番どおりにまとめています。記事では、4つの応急処置を表にし、画面を白黒にする研究の数字は原典で確かめた値に直しました。
スマホ依存をやめたいのにやめられないのは、意思が弱いからではない
結論から言うと、スマホ依存をやめたいのにやめられないのは、意思が弱いからではありません。この記事でいう「スマホ依存」は病気の診断のことではなく、やめたいのにやめられない状態のことです。
僕も6年ほど前、公認会計士試験の勉強をしていた頃は、毎日スマホの誘惑と戦っていました。強制力のない家で、1人で毎日8〜10時間勉強する環境です。ひどい時は、動画をスクロールする手が止められませんでした。調べに調べて対策を続けたら、スマホを見る時間が着実に減っていきました。
YouTubeもInstagramもTikTokも、僕らが1秒でも長く画面を見るほど、運営している会社が儲かる仕組みです。アプリは、スマホをいじる手が止まらないように、計算に計算し尽くされています。なんとなく対策するだけで解決するわけがありません。
スマホを見ること自体が悪いわけではありません。いい動画に時間を使うならいいし、たまに見るのも全然いいと思います。問題は、見ても満たされず、時間だけが消えて自己嫌悪と罪悪感だけが残ることです。その時間の使い方を変えたい人に向けて、応急処置4つと、戻らないための5つのステップを順に書きます。
この記事は動画『【毎日"80分"削減】スマホ中毒で「無駄な時間」を過ごす人へ。』(9.7万回再生)をもとに構成しています。全編は24分です。
スマホ依存の対策は、まず応急処置を4つ
最初に、すぐできる対策を4つ紹介します。これは応急処置です。絆創膏のように、まずはその場で使ってください。
| 応急処置 | やること | 補足 |
|---|---|---|
| 1. 画面を白黒にする | グレースケールに切り替える | 最初は少なくとも3日間試す |
| 2. 寝室の外に置き場所を作る | 寝る前は毎回そこに置く | 「ここに置く」の形で決める |
| 3. ショート動画のアプリを消す | 期間を限って、動画は0にする | 難しければ制限アプリを使う |
| 4. 通知を全部切る | 9時・13時・17時・21時にだけ見る | 即レス必須の仕事でなければ1回試す |
1 スマホの画面を白黒にする
画面が白黒に変わると、スマホの魅力が半減しませんか。大学生73人のスマホを8〜10日間グレースケールにした研究では、1日の画面時間が平均37.90分短くなりました(Holte & Ferraro, 2020)。動画では「38%減った」と話していますが、原典にある数字はこの1日37.90分です。減ったのはSNSとネットの閲覧で、動画を見る時間は変わらなかったようです。
iPhoneは、設定のアクセシビリティから画面表示とテキストサイズへ進み、カラーフィルターでグレースケールを選びます。僕はショートカットに入れていて、電源ボタンを3回押すと切り替わるようにしています。最初は少なくとも3日間試してください。3日目に色を戻すと、こんなに明るかったっけと感じるはずです。
2 寝室にスマホを持ち込まず、置き場所を作る
寝室は、1日の終わりと始まりの両方を過ごす唯一の場所です。朝一でスマホを見て、それが無駄な時間だった場合、また見てしまったという罪悪感から1日が始まります。夜は後ろの予定がないので、いくらでもスマホに時間を溶かしてしまいます。深夜2時、3時まで、という人も少なくありません。しかも夜は疲れていて、吸い込まれやすい時間です。
ルールは「寝室に持ち込まない」ではなく、「リビングのここに置く」のように決めてください。「〜しない」というルールだと、逆に意識してしまったり、守りにくかったりするからです。
3 ショート動画のアプリを消す
スマホ依存の中でも、いちばんインパクトが大きいのはショート動画だと思います。あれは情報ではなく、脳をバグらせる麻薬のようなものだと思っています。何が出てくるか分からないランダム性が、僕らを依存させます。
イメージは高速道路です。ETCをくぐったら、次のETCまで基本的には降りられません。1回入り口に入ると、ある一定のラインまでは気づくことも降りることもできない。それぐらいの自動運転モードに入ってしまいます。だから期間を限って、動画は0と決めてください。アプリを消すのが難しい人は、制限アプリを使う、ブラウザからしかログインできなくする、といったやり方もあります。
4 通知を全部切り、9時・13時・17時・21時にだけ見る
即レスが必須の仕事もあるので、絶対に通知をオンにしておく必要がある環境でなければ、1回切って、決めた時間にだけ見てください。
これは公認会計士の受験期に、僕にめちゃくちゃうまくはまった方法です。4時間おきにしか携帯を見ないと決めました。それまでは通知が来ると勉強中でも見てしまい、気づけば30分、1時間と過ぎていました。見る時間を決めると連絡はまとめて返せるので、それ以外の時間を集中に充てられます。
もっとひどい時は、携帯を固定電話にしていました。勉強場所からいちばん遠いコンセントで、充電コードが刺さった状態でしか使わない。横にタイマーを置いて休憩の10分や5分をセットし、鳴ったら例外なしでスマホを置いて部屋に戻る。これでスマホを触る時間がかなり減りました。ただ、これはやりすぎだと思いますし、仕事をしているとできない人のほうが多いはずです。在宅の人や経営者、フリーランスなど、時間をある程度自由に使える人は、要素だけでも取り入れてみてください。
依存しているのはスマホではなく、スマホがくれる刺激と安心感
ここまでの4つを試したけれど、結局戻った人もいるはずです。実は、僕らが依存しているのはスマホそのものではありません。本当に依存しているのは、スマホがくれる刺激とか安心感です。
ついスマホをいじるのは、疲れてしんどい時、ストレスがある時、退屈な時、不安な時、やるべきことから逃げたい時ではないでしょうか。SNSを見ればすぐに気持ちよくなれる。ショート動画を見れば何も考えなくていい。通知が来れば誰かと繋がっている感じがする。スマホは、暇や不安、逃げたい気持ち、孤独の埋め合わせを、全部まとめてやってくれる装置です。
だからショート動画のアプリを消しても、今度は違うアプリを入れたり、ゲームをしたり、部屋の片付けを始めたりします。スマホを遠ざけても、逃げたいという欲求のほうをどうにかしないと、またすぐに戻ってしまいます。
スマホ依存から抜け出す5つのステップ
上から順番に、30日かけて取り組んでください。
- 刺激の基準値を下げる
- トリガーを特定する
- 代わりの行動を設計する
- 根本原因を排除する
- アイデンティティを再定義する
ステップ3まででスマホの時間が減っていく人も多いのですが、それでも戻る人のためにステップ4、長続きさせるためにステップ5があります。
ステップ1 刺激の基準値を下げる
最初にやるのは、日常の刺激を減らすことです。動画ではこのステップを「ドーパミンの基準値を下げる」と呼んでいます。強すぎる刺激に慣れると、勉強や仕事のように、めんどくさいけれど重要なことができなくなる。人との会話すらつまらなく感じます。食べ物でも、どんどん味の濃いものが欲しくなるのと同じです。まずは、壊れてしまった刺激の基準値を元に戻します。
応急処置で距離を取ったうえで、今より低刺激な生活を、まずは1週間続けてください。
- 1日5分、目を閉じて何もしない時間を作る
- 1日10〜15分、スマホを持たずにぼーっと散歩する
- 食事中はスマホを見ない
- 寝る前の10分間は無音で過ごす
最初は、何これ、つまらない、そわそわする、スマホを触りたい、といった気持ちになります。それで大丈夫です。退屈な時間の作り方は、ドーパミンデトックスの4ステップでも書いています。
ステップ2 トリガーを1週間記録する
低刺激の生活をやろうとしても、どこかでうまくいかない日が出てきます。そのときに、自分がどんな状況でスマホをいじるのか、きっかけ(トリガー)を記録してください。朝起きてすぐ、仕事の切れ目、ミーティングの後、食事の後、移動中、寝る前、孤独なとき、仕事が行き詰まったとき。
1週間でいいので記録すると、自分のパターンが見えてきます。パターンが分かれば、そこに直接対策を打てます。白黒や寝室の対策をなんとなくやるのも悪くはありませんが、より本質的には自分に合わせた対策が大事です。きっかけの探し方は、悪習慣をやめる方法も参考にしてください。
ステップ3 代わりの行動を「AしたらBする」で決める
トリガーが分かったら、トリガーごとに代わりの行動を決めます。最初は「AしたらBする」という公式に当てはめてください。朝起きたらスマホを見てしまう人は、朝起きたら外に出て散歩に行く。今は、起きることとスマホが結びついているだけなので、そこを別の行動に置き換えます。
代わりの行動には、運動もおすすめです。ちょっとランニングした後は、お菓子を食べたい、スマホを見たいという欲求が起こりにくくなります。これはやってみると体感できると思います。仕事を先延ばししてスマホを見てしまう人は、携帯を手元に置かず、行き詰まったらメモに「今仕事が行き詰まっている、めんどくさい、やめたい」と書いて、自分を客観視する。待ち時間なら、読書をするか、隣にいる人と話す。電車に乗ったら携帯をいじっていた人は、電車に乗ったら違う行動をする、と事前に決めておく。
悪習慣は、入り口に一度足を踏み入れたら、高速道路のように降りられません。ETCをくぐる手前で止めるか、違う道に入れ替える。入り口から断ち切れるので、成功する確率が上がります。
ステップ4。それでも戻るなら、根本原因を排除する
ステップ1〜3で、スマホの時間が着実に減ったり、決めたことをやりきれている感覚が高まったりする人が多いです。それでも再発してしまう人は、根本原因の排除に取り組んでください。5つのステップの中で、ここが最も重要です。
僕らが依存しているのは、スマホがもたらしてくれる安心感や刺激でした。スマホを遠ざけても、それを何かで埋めようとしてしまう。だったら、疲れやストレス、孤独といった原因のほうを減らします。原因は大きく3つです。
疲れとストレスは、睡眠と運動で減らす
動画では、疲れていたりストレスが強かったりすると、判断力を司る前頭前野の働きが落ちて、意思力が弱い状態になると話しました。気合の問題ではなく、生理的な問題です。自分でどうにもできない種類のストレスなら、軽いものでも前頭前野の働きが急に落ちることがある、とまとめた総説があります(Arnsten, 2009)。
そのうえで動画では、7〜8時間の睡眠と週150分ほどの運動を挙げ、この2つがあるだけでスマホへの衝動がかなり弱まると話しました。逆に、この2つをやらずにスマホの対策だけをしても、元に戻ってしまう人もいます。睡眠と運動の目安は公的機関も出していて、米国のNHLBIは成人に7〜9時間の睡眠を、WHOは週150分以上の中強度の運動を勧めています。
孤独は、本物の繋がりで埋める
僕らはもともと群れで生きてきた生き物なので、孤独を感じると繋がりを求めます。通知やいいね、誰かのコメントは、誰かと繋がっている感覚を引き起こすと思います。
僕の場合は、リアルな繋がりを増やしたことで、スマホへの依存度がかなり下がりました。公認会計士の受験期はコロナで、基本的に誰にも会えず、相当依存に入りやすい状態でした。僕の私見も入っていますが、対面で会って話す繋がりは、何にも代えがたいものです。本物の繋がりを増やすことも、スマホ依存を減らす助けになると思います。
暇と目標のなさは、ロードマップで埋める
やるべきことが曖昧だと、「まだいいか」という悪い意味の余裕が生まれて、スマホをいじってしまいます。目標がない、夢中になれるものがない、というのも根本的な原因です。前に進んでいる時間がないので、スマホが手軽にくれる短期的な満足感で埋めたくなります。逆に、毎日これをやればいいというロードマップがToDoまで落ちていれば、スマホをいじっている暇はなくなります。これは、僕が体感として確信していることです。
すぐにできるのは、人生のロードマップを3年分だけでいいので描いてみることかなと思います。3年後にどうなっていたいかを、仕事・プライベート・健康の3つで書き出す。それを2年後、1年後、半年後、3か月後、1か月後に分けて、毎日やることまで決めます。何が大事か分からない人は、先に人生の棚卸し(Think Day)のやり方を試してみてください。
ステップ5。小さな約束を守って、アイデンティティを再定義する
最後のステップ5までやると、かなり再発の防止になります。スマホの時間が減ったあと、それを長続きさせるために何がいちばん重要か。僕の結論は、アイデンティティ、つまり「自分はこういう人間だ」という思い込みを変えることです。
習慣の本として有名な『Atomic Habits』に、こんな例があります。タバコを勧められて、Aさんは「結構です、今やめているので」、Bさんは「結構です、吸わないので」と断る。Aさんはまだ自分を吸う人間だと思いながらやめようとしていて、Bさんはもう吸わない人間になっています。僕らも、スマホをやめようとしている人間ではなく、スマホに時間を溶かさない人間だと、心の底から思う必要があります。
思い込みを変えるには、小さな約束を日々の生活で守り続けることです。今朝はスマホを見ずに運動をした。食事中にスマホを触らなかった。待ち時間に瞑想した。こうした事実が積み上がると、自分は約束を守れるタイプの人間だと思えるようになります。僕らは24時間365日、自分の行動を全部見ているからです。
僕がやったのは、いい行動ができたときに、めちゃくちゃ自分を褒めることです。もっと現実的なやり方は、1日の終わりに今日できたことを3つ書き出すこと。3つでなくても、たくさん書いて構いません。今日できた事実を書いていけば、自分はこれができる人間だという思い込みが強くなっていきます。考え方の土台は、モチベーションが続かない人への「セルフイメージを先に変える」でも書いています。
よくある質問
スクリーンタイムは1日何時間まで減らせばいいですか
動画では、何時間までという目安は話していません。決まった数字を目指すより、まず今の1日の平均と、どのアプリに時間を使っているかを確かめるのがおすすめです。確かめ方は、ドーパミンデトックスのやり方のステップ1で書いています。
寝室にスマホを置かないと、目覚ましはどうすればいいですか
目覚まし時計を1つ用意するのがおすすめです。スマホを目覚まし代わりにしていると、寝室に持ち込む理由が残ってしまいます。充電器も置き場所に移しておくと、寝る前にそこへ置きやすくなります。
生活に支障が出るほどやめられないときは、どこに相談できますか
この記事の方法は、自分でスマホの使い方を見直すためのものです。仕事や学校、睡眠に大きな支障が出ているときは、1人で抱え込まずに専門家に相談してください。厚生労働省は、依存症の相談先として専門医療機関や保健所、精神保健福祉センターを案内しています。
まとめ
スマホ依存をやめたいのにやめられないのは、意思が弱いからではありません。
- 応急処置は、白黒にする・寝室の外に置き場所を作る・ショート動画のアプリを消す・通知を切る、の4つ
- ステップ1〜3で、刺激の基準値を下げ、トリガーを記録し、「AしたらBする」で代わりの行動を決める
- それでも戻るなら、ステップ4で疲れ・孤独・目標のなさという根本原因を排除する
- ステップ5で小さな約束を守り続け、スマホに時間を溶かさない人間だと思えるようにする
見るだけ、読むだけでは何も変わりません。5つのステップは、上から順番に30日かけて試してみてください。白黒にした画面の見え方は、動画で見られます。
出典
- Holte, A. J., & Ferraro, F. R.「True colors: Grayscale setting reduces screen time in college students」The Social Science Journal(2020年。グレースケールにした大学生の1日の画面時間が平均37.90分短くなったこと)
- Arnsten, A. F. T.「Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function」Nature Reviews Neuroscience 10, 410–422(2009年。ストレスで前頭前野の働きが落ちること)
- NHLBI「How Much Sleep Is Enough?」(成人の睡眠は7〜9時間)
- WHO「Physical activity」(成人の運動は週150分以上の中強度)
- 厚生労働省「依存症についてもっと知りたい方へ」(相談先としての専門医療機関・保健所・精神保健福祉センター)