習慣・自己管理

努力に遺伝子は何割関わる?双子研究の答えと没頭の公式

2026年10月14日更新 約13分で読めます 文・福井龍介(Ryu)/POTEX株式会社 代表取締役

「努力に遺伝子は何割関わる? 没頭の公式」の文字。話すRyuと、DNAのらせん

「努力できるのも才能」「努力できるかどうかは、生まれつき遺伝で決まっている」。そう聞くと、才能がなければ無理なのかと思いますよね。結論から言うと、努力のしやすさに遺伝は関わりますが、変えられないという意味ではありません。

僕ももとは、全然努力できない、自分に甘えてしまうという感覚の人間でした。そこから公認会計士試験の合格や海外大への留学を経て、23歳で起業しています。この記事では、双子研究の数字を原典で確かめたうえで、努力できる人が無意識に整えている没頭状態の作り方を説明します。

この記事は、僕の動画『なぜ"あの人"はハードワークができるのか?』(1.9万回再生)を記事にしたものです。

努力に遺伝子は関わる。
でも変えられないという意味ではない

努力できるかどうかに、遺伝は関わっています。双子研究では、粘り強さや勤勉性の個人差のうち、およそ3割台から6割台が遺伝で説明されると推定されています。ただし、この数字は「あなたの努力の何割が生まれつき決まっているか」を表すものではありません。

動画では「30から50%」と紹介しました。原典を開いて確かめると、推定値は研究によって幅がありました。双子研究は、遺伝子がほぼ同じ一卵性と、半分ほど同じ二卵性の双子がどれだけ似ているかを比べる方法です。主な2本を並べます。

研究対象測ったもの遺伝で説明される割合(推定値)
Rimfeldら(2016年)イギリスの16歳の双子 2,321組グリットの「粘り強さ」37%
同上同上グリットの「興味の一貫性」20%
Takahashiら(2021年)日本の9〜18歳の双子 約2,000組自制心やグリットなど、勤勉性に関わる4つの尺度それぞれ62〜64%

Takahashiらの論文は、それまでの研究もまとめています。勤勉性の個人差のうち、遺伝で説明されるのは30〜60%でした。一人ひとりが別々に経験する環境(測定の誤差も含む)で説明されるのは、40〜70%でした。

遺伝率は、集団の中の個人差の内訳

ここで出てくる割合は「遺伝率」と呼ばれます。ある時点の、ある集団の中で、人によって違う部分(個人差)のうち、遺伝の違いで説明できる割合を推定したものです。ひとりの人の努力のうち、何割が生まれつき決まっているかを表す数字ではありません。

Takahashiらの論文も考察の中で、遺伝率は、変えられないことを意味しないと書いています。遺伝率は、特定の時点・特定の集団で個人差を分けたものです。この数字は、成長や働きかけで集団の平均が変わる可能性を否定していません。

育ち方の違う芽の集まりで集団の中の個人差を表し、そこに遺伝の違いと環境が関わることと、ひとりの人の努力は遺伝と環境の割合に分けるものではないことを示した図

「努力遺伝子」という1つのスイッチがあるわけではない

「努力遺伝子」という言葉から、努力できるかどうかを決める1つの遺伝子を想像するかもしれません。行動遺伝学では、人の典型的な行動の特徴は、非常に多くの遺伝的な違いと関わっていると整理されています。1つ1つが説明する個人差は、ごくわずかです(Chabrisら、2015年)。

動画で伝えたかったのは、遺伝以外のところです。努力できる人は才能だけではなく、なぜか努力できてしまう条件を無意識のうちに整えています。

動画では、その条件の中心になる「没頭状態」の作り方を、図を見せながら話しています。記事では、動画で触れた研究を原典で確かめた数字に置き換え、質問に答えながら進められるように整理しました。

この記事は動画『【書籍化決定!!】なぜ“あの人”はハードワークができるのか?』(1.9万回)をもとに構成しています。全編は21分です。

自制心が高い人ほど、
欲求を我慢する場面が少ない

努力できる人は、我慢が得意な人とは限りません。自制心が高い人ほど、欲求を我慢する場面が少なかったという研究があります。

以前の僕は、努力家と聞くと「日々きついことを我慢して、自己管理能力が高い人」を思い浮かべていました。でも実際の研究は、その真逆かもしれないことを示しています。

2012年に発表されたHofmannらの研究では、ドイツの成人205人が1週間、端末の合図が鳴るたびに記録をつけました。記録したのは、そのとき感じていた欲求と行動です。欲求の報告は合計7,827件です。その結果、自制心が高い人ほど感じる欲求が弱く、「やりたい」と「やってはいけない」の葛藤も、欲求に抵抗した回数も少なかったのです。

研究チームは考察で、自制心の高さは、誘惑に抵抗することより、そもそも誘惑を避けることで働いているようだと述べています。自制心を使う回数そのものが、少なくて済んでいたということです。

動画ではこれを、努力できる人は誘惑と戦うタイプや我慢するタイプではなく、誘惑を感じにくいタイプだと話しました。「勉強したくない、でもやらなきゃ」という葛藤自体が少ない。努力イコール忍耐や我慢、という考え方とは真逆です。

心理学者ホフマン教授らによる調査として、対象205人(成人)、期間1週間、日常の欲求と行動をリアルタイムで記録したと示す動画のスライド
図1. 成人205人が1週間、日常の欲求と行動を記録した研究の概要(動画『なぜ"あの人"はハードワークができるのか?』より)

努力できる人は、
頑張らずに没頭している

我慢せずに努力できる状態は、意図して作り出せます。それが頑張らない努力、英語では effortless effort と呼ばれる状態です。

僕は著書『なぜか努力できる人が無意識にやっていること』(KADOKAWA・2025年9月)を10万文字ほどで書きました。意志力ではなく無意識に働きかけて、なぜか努力できる人になる方法です。動画で伝えたかったのは、その中でも頑張らない努力の作り方です。

小さい頃、習い事やゲーム、小説、アニメ、得意な科目の勉強に、時間を忘れてのめり込んだ経験はありませんか。やめなさいと言われても、ついやってしまう。周りからは「なんでそんなに打ち込めるの」と言われても、本人はケロッとしている。これが没頭状態です。

没頭とは、努力している感覚がなく、気づいたら行動が続いてしまう、極めて幸福な状態のことです。これは僕なりの定義です。

幸福の理論にも、没頭は入っています。心理学者マーティン・セリグマン博士は、幸福をつくる5つの要素を「PERMA」としてまとめました。その1つがエンゲージメント(没頭)です(ペンシルベニア大学ポジティブ心理学センター)。

子どもの頃、気づいたら夜が明けるまでテレビゲームに熱中していた。親しい友人と語り合っていたら、あっという間に数時間が過ぎていた。そんな、いつの間にか時間が消える感覚を、現実の目標に向けて作り出すのが狙いです。

そのために大事なことが2つあります。公式で表すなら、長期的な没頭状態は、ワクワク感×自分らしさで実現できるということです。ありきたりに見えるかもしれませんが、奥が深く、本質が詰まった公式です。

なぜか努力できる人は没頭状態にあり、没頭状態はワクワクと自分らしさの掛け算で、ワクワクは欲望と自己効力感、自分らしさは価値観やアイデンティティなどから生まれることを示した動画の図
図2. 没頭状態をワクワク感と自分らしさに分けた全体像(動画『なぜ"あの人"はハードワークができるのか?』より)

没頭の条件1。
ワクワク感は、欲望と自己効力感から生まれる

長年1つのことに打ち込んでいる人は、共通して未来に心の底からワクワクしています。義務感や恐怖心から「〜しなければならない」と追い込むだけではなく、子どもが遠足を心待ちにするような純粋なワクワク感が、その人を動かしています。このワクワク感は、欲望を解放することと、自己効力感の2つから生まれます。

4つの質問で、心の奥底に眠る欲望を解放する

「心から達成したい目標」と言われても、ピンとこないかもしれません。次の質問のうち、答えやすいものにいくつか答えてみてください。

  1. 達成を想像しただけで、思わずにやっとしてしまう目標や理想はありますか。それはどんな状態ですか
  2. やりたいのにできない、やってはいけないと自分で制限をかけていることはありませんか。制限がなければ挑戦したいことは何ですか
  3. 周りの人に言えないけれど、ずっと心の中で温めている願望や目標はありますか
  4. どんな失敗をしても世界中から認められる奇跡が起きたら、どんな夢を追いますか

日常で無意識に蓋をしている、「本当はこうしたい」という心の声に耳を傾けてください。誰かの評価は気にせず、自分の純粋な気持ちに正直になります。

答えにくいときは、仕事・学習・自己成長・家族・恋愛・友人・健康・趣味のように、領域ごとに分けて考えるとやりやすいです。どれくらい先を思い浮かべるかに正解はありませんが、3〜5年後の理想像が、多くの人にとってワクワクしやすい目安です。自分と向き合う時間の取り方は、人生の棚卸しを月2時間で行うThink Dayのやり方で書いています。

達成した姿を、映画のワンシーンのように五感でイメージする

制約のない理想像を言葉にできたら、達成した姿を鮮明にイメージします。理想が叶ったとき、どこにいて、誰といて、どんな音が聞こえ、どんな感情を味わい、どんな景色が見えるか。五感で想像してみてください。

僕らは「〇〇を達成したい」という文字づらでワクワクするのではなく、達成したときの状態やその後の人生を映像で見られたときに、よりワクワクします。映画館でホラー映画を見ると、作り物だと分かっていても怖くなるのと同じです。ぜひ、映画のワンシーンを描くように最高の状態をイメージしてください。

ただし、イメージはやり方が大事です。動画では、自己肯定感が低い人が高すぎる目標をイメージすると、かえって気分が悪くなることもあると話しました。その場合は「自分は成長できる存在だ」という、結果に至るまでの過程に目を向ける言葉でイメージしてみてください。

朝のルーティンを習慣にしたいなら、朝起きてルーティンを淡々とこなし、仕事や勉強に打ち込むまでの工程を、1つずつ順番にイメージする方法もおすすめです。

ただ、本当に大事なのはここからです。欲望を解放してイメージするだけでは、願いは叶いません。具体的な行動計画に落とし込み、行動すれば変われるという確信を作ることが大事です。

自分ならできそうという自己効力感がないと、ワクワクは生まれない

ワクワク感を作る2つ目の要素が、自己効力感です。自分ならできそう、という感覚や信念のことです。

ゴールの見えないマラソンを想像してください。42.195kmで終わらず、いつまでも続くマラソンを走る気力は湧きませんよね。達成できると信じられない理想は、ワクワクどころか、不安や絶望のほうが大きくなることもあります。

成功体験が少ないときや、今は自己効力感が低いときの作り方も、動画で話しています。理想を3〜5年後から1年後、6か月後、3か月後と目先のゴールまで分解する。寝る前に今日できたことを3つだけ書き出して、スモールウィンを積み重ねる。理想を分解して毎日の前進を書き出すやり方は、自己管理ができない人へ。3000時間勉強した僕の3つの脳ハックの「積み上げ日記」で詳しく書いています。

没頭の条件2。
自分らしさがあると、ワクワクが薄れても努力を続けやすい

ワクワク感だけでは足りません。ワクワク感は没頭のきっかけになりますが、長く続けるには自分らしさとの一致が欠かせません。

新しいチャレンジにワクワクして始めても、時間が経つとワクワク感が薄れてしまうことがあります。感情には波がありますし、刺激にも慣れてしまうからです。どんな目標にも、スランプや困難は訪れます。そんなときに支えになるのが、「自分にとってこれは意味がある」「これが自分自身なんだ」と感じられる自分らしさです。

ここでいう自分らしさは、自分の価値観、なりたい理想の自分、目的意識といった深い部分とつながっていることを指します。動画で出した2つの例を並べます。

目標ワクワクだけの動機自分らしさとつながった動機
起業自由に働きたいこの社会課題を解決するために起業した
英語学習英語が話せたらかっこいい過去の経験から、異文化を橋渡しする仕事がしたい

ワクワクだけで起業すると、困難に直面したときにやめてしまうこともあると思います。英語学習も、かっこいいからという動機だけでは三日坊主になりがちです。自分らしさとつながった動機を持つ人は、時間がかかっても続けやすくなります。

自分らしさが分からないときは、次の3つの質問に向き合ってみてください。

  1. なぜその目標を達成したいのか
  2. その目標を達成することで、どんな人間になりたいのか
  3. 自分が大切にしたい価値観やあり方は何か
なぜその目標を達成したいのか、どんな人間になりたいのか、大切にしたい価値観やあり方は何か、の3つの質問を示した動画の画面
図3. 自分らしさを見つける3つの質問(動画『なぜ"あの人"はハードワークができるのか?』より)

動画で出した参考例では、表面的な目標の奥にある価値観や目的意識が浮かび上がっていました。「安心して暮らすこと」「成長を感じること」「人に貢献する自分であること」「挑戦を続ける人であること」です。

仕上げに、
努力している自分こそ真の自分だと信じる

没頭を加速させる仕上げは、努力している自分や、目標のために行動している自分こそが真の自分だという信念を固めることです。

一流の野球選手にとっては、プロ野球選手であること、ハードなトレーニングを欠かさずこなすこと、規律正しく過ごすことが、自分自身と切り離せません。長く1つのことに打ち込んでいる人は、その活動が自分のあり方の一部になっています。僕らも、勉強や仕事、トレーニングに打ち込んでいる状態を自分らしいと感じられなければ、努力は長続きしにくくなります。

これは「自分らしいから続く」という一方向の話ではありません。続けることで、その活動を自分らしく感じるようになるという逆向きの流れもあります。自分らしさが強まると、理想の行動が増える。すると、さらに自分らしさが強まる。この正のループに一度乗ってしまえば、結構勝ちです。

続けることで活動を自分らしく感じ、自分らしさが強まると理想の行動が増え、さらに継続へ戻る正のループを示す循環図

正のループを回すために最初にできるのは、理想のあり方を定義することです。目標を立てるときは、次の3つをセットにします。

目標の種類中身例
結果目標これを達成したい資格試験に合格する
行動目標これを毎日続ける毎朝、問題集を解く
あり方の目標こんな自分でありたい自分は物事を継続できる人間だ

あり方の目標は、無意識の習慣になるまで大切に続けるのがポイントです。この自分らしさは簡単には手に入りませんが、だからこそ取り組む価値があります。

研究でも、習慣は「自分が何者か」を形づくる一部になりうることが示唆されています。特に、自分に関わる目標や大切な価値観と結びついたときです。新しく身につけた行動も、自分らしさと結びつけると保ちやすくなるかもしれない、と研究チームは述べています(Verplanken & Sui、2019年)。

「自分は早起きする人だ」のように、先にセルフイメージを変えるやり方は、モチベーションが続かない人へ。行動を続ける7つの方法で書いています。

よくある質問

研究によって遺伝の割合が違うのはなぜですか

2つの研究は、測ったものも、答えた人も違います。イギリスの研究はグリットを2つに分けて、16歳の本人が自分について答えました。日本の研究は自制心やグリットなど4つの尺度について、9〜18歳の双子の母親が答えています。どの違いが差を生んだのかは、この2本からは分かりません。1つの数字ではなく、幅で受け取るのがおすすめです。

没頭しすぎて、働きすぎにならないか心配です

動画でも、ワーカーホリックのように仕事や勉強を中毒的にやりすぎることには注意が必要だと話しています。そのうえで、打ち込んでいる仕事や勉強が、価値観や人生の目的、欲望と重なっているなら、それは非常に幸せなことだとも話しています。

目の前の1時間に集中したいときも、同じやり方でいいですか

この記事の公式は、何か月、何年と続く長期的な没頭の話です。短い時間の没頭には、心理学者チクセントミハイが提唱したフローを応用するやり方があります。勉強や仕事でフロー状態に入る3つの条件は、別の記事で書いています。

まとめ

努力できるかどうかに遺伝は関わりますが、変えられないという意味ではありません。動画で伝えたかったのは、頑張らない努力、つまり没頭状態の作り方です。

  • 双子研究の推定では、粘り強さや勤勉性の個人差の3割台から6割台が遺伝で説明される
  • 自制心が高い人ほど、欲求を我慢する場面が少なかったという研究がある
  • 動画では、長期的な没頭状態はワクワク感×自分らしさで実現できる、という公式にまとめた。2つがそろうと、やらなきゃではなく、やりたくてたまらない状態が自然と生まれる
  • 仕上げに、あり方の目標を立てて正のループを回す

まずは動画の流れに沿って、1つずつ質問に向き合ってみてください。

出典

  1. Rimfeld, K., Kovas, Y., Dale, P. S., & Plomin, R. (2016). True grit and genetics: Predicting academic achievement from personality. Journal of Personality and Social Psychology, 111(5), 780-789. https://doi.org/10.1037/pspp0000089
  2. Takahashi, Y., Zheng, A., Yamagata, S., & Ando, J. (2021). Genetic and environmental architecture of conscientiousness in adolescence. Scientific Reports, 11, 3205. https://doi.org/10.1038/s41598-021-82781-5
  3. Chabris, C. F., Lee, J. J., Cesarini, D., Benjamin, D. J., & Laibson, D. I. (2015). The Fourth Law of Behavior Genetics. Current Directions in Psychological Science, 24(4), 304-312. https://doi.org/10.1177/0963721415580430
  4. Hofmann, W., Baumeister, R. F., Förster, G., & Vohs, K. D. (2012). Everyday temptations: An experience sampling study of desire, conflict, and self-control. Journal of Personality and Social Psychology, 102(6), 1318-1335. https://doi.org/10.1037/a0026545
  5. Penn Positive Psychology Center. PERMA Theory of Well-being and PERMA Workshops. https://ppc.sas.upenn.edu/learn-more/perma-theory-well-being-and-perma-workshops
  6. Verplanken, B., & Sui, J. (2019). Habit and Identity: Behavioral, Cognitive, Affective, and Motivational Facets of an Integrated Self. Frontiers in Psychology, 10, 1504. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.01504

動画で見る

【書籍化決定!!】なぜ“あの人”はハードワークができるのか?

全編を動画で見る

チャンネル『Ryuの自己管理室』(登録者16万人)で、自己管理と習慣化のメソッドを発信しています。

続けるところまで、
一人でやらなくていい。

現在地と目標をお聞きし、あなたに合う伴走の形をご提案します。
無理な勧誘は行いません。

LINEでお問い合わせ

友だち追加後、トークで「無料相談」とお送りください。

プログラムの内容を見る