頑張ることは美しい。でも、気合と根性だけで頑張り続けられるほど、僕らは強くありません。僕も、遊びたい気持ちを我慢して無理に走った時期がありました。この記事では、ゲームに夢中になる仕組みを借りて、きつい努力を楽しめる形に変える8つの切り口を、動画で話した順番のまま紹介します。
この記事は動画『【努力依存】ハードワークが楽しく続く"たった1つ"の極意』(15.8万回)をもとに構成しています。全編は17分です。
努力が続かないなら、
やり方を変える
先に言うと、僕はハードワークを否定していません。たくさん働きたい人や勉強したい人は、やればいいと思っています。ただし、目的が曖昧なまま焦りや不安に追われる、がむしゃらな努力を、あるべき姿だとは思いません。
そこで使えるのが、ゲーム以外の活動にゲームの仕組みを取り入れるゲーミフィケーションです。ゲームは、やらなくても困らないのに、つい続けてしまいます。その理由を勉強や仕事にも応用できれば、周りからは大変そうに見えることでも、本人は夢中で取り組めます。
土台にしたのは、Yu-kai Chou氏のOctalysis(オクタリシス)です。人が行動したくなる理由を8つのコアドライブに分けた枠組みで、僕はカナダ留学中に原著を買って読みました。
| # | 8つの切り口 | 努力への使い方 |
|---|---|---|
| 1 | 目的 | 目の前の行動と人生の目的をつなぐ |
| 2 | 進歩と達成 | できたことを記録する |
| 3 | 工夫と手応え | 目標を小さく分けて振り返る |
| 4 | 所有 | 自分で決めた目標にする |
| 5 | 社会的影響 | 一緒に取り組む人を選ぶ |
| 6 | 希少性 | 普通の力を掛け合わせる |
| 7 | 予測不能と好奇心 | 気になることを追い続ける |
| 8 | 損失回避 | 避けたい未来を思い出す |
1〜3。目的を決め、
進歩と手応えを作る
1. 何のためにやるのかを書く
ゲームでは、世界を救う使命を与えられた主人公が旅に出ます。現実でこれに当たるのが、人生の目的や価値観と、目の前の行動がつながっている状態です。
何のためにその試験に受かりたいのか。何のためにお金が欲しいのか。最初は仮でも構いません。目的は1日で完成するものではなく、何度も考えながら更新していくものです。僕も今でも毎朝、自分が大事にしたいことと将来の目的を書いたページを見ています。
まとまった時間を取って目的を考えたい方は、人生を棚卸しする時間の作り方も使えます。
2. できたことを記録する
続けるには、目標に向かって進んでいる感覚が必要です。会計士の受験生だったころは、毎日の勉強時間と、その日にできたことを記録していました。筋トレに熱中していたころは、種目、重量、セット数、回数を残していました。
頑張る人ほど「まだ足りない」と考えます。その気持ちは成長に必要ですが、できたことを見ないままだと、進んでいる実感を失います。前へ進みたい気持ちと、今日の進歩を認めることは両立します。
記録を紙で続けたい方は、習慣トラッカーの作り方も参考にしてください。
3. 工夫できる余地と、すぐ返る手応えを作る
レゴが大人でも楽しいのは、完成までに自分で工夫できるからです。サーフィンも、変わり続ける波に合わせた判断の結果が、すぐ返ってきます。
勉強や仕事でも、1年後の大きな目標だけを見るのではなく、今日、1週間、1か月の目標に分けます。短い間隔で振り返れば、次の工夫ができます。長期目標だけを置いたときに生まれやすい中だるみも減らせます。
4〜6。自分で決め、
環境と希少性を使う
4. 自分で決めた目標にする
ゲームで自分が作ったアバターに愛着が湧くように、目標にも自分のものだという感覚が要ります。僕が英語を話せるようになりたいと思ったことも、留学も、試験も、YouTubeも、自分で決めました。
ストイックな生活を望まない人に、反論するつもりはありません。生産的に生きることも、数ある価値観の1つです。大事なのは、周りの正解ではなく、自分の人生を自分で決めている感覚です。
5. 一緒にいる人を選ぶ
家庭の電力使用量を周囲の平均と比べて示すと、行動が変わることを確かめた研究があります(Schultz et al., 2007)。僕らは周りの基準に影響されます。
勉強なら、自分と同じくらいか、少し先を進む人と取り組む。すぐに環境を変えられなくても、誰と時間を過ごしているかを見直す価値はあります。
6. 普通の力を掛け合わせる
大学1年生で高校野球をやめたあと、僕は何かに挑戦したいと思っていました。そのとき「英語を話せる公認会計士は珍しい」と聞き、まず簿記3級から始め、その後に留学しました。当時19歳の、素直な発想です。
1つずつは普通でも、掛け合わせると希少性が生まれます。ただし、珍しければ何でもいいわけではありません。その組み合わせを必要とする人がいるかも考えます。
7〜8。好奇心を追い、
損失回避は使いすぎない
7. 好奇心に沿った挑戦を選ぶ
僕が8つの中で最もよく使っているのが、予測できないものへの関心と好奇心です。生産性、自己管理、生活の質を上げることは、もともと僕の趣味でした。伸び悩む時期があっても、調べて試すこと自体が楽しかったので続きました。
僕は努力家だから続いたわけではありません。誘惑にも負けます。小学生が放課後に野球をするような感覚で、好きなことを続けてきました。やるべきことが今は楽しくなくても、自分の好奇心を探すことまでやめないでください。僕にも、何をしたいのか分からず内省を続けた時期がありました。
やることへ意識を戻す環境は、深く集中するための準備でも整理しています。
8. 避けたい未来を見える場所に置く
KahnemanとTverskyのプロスペクト理論は、同じ大きさの得よりも損を強く感じやすい傾向を示しています。僕は受験生のころ、今だらけたらどんな未来になるかを書いた表を机に貼り、毎日見ていました。
ただし、損失回避だけに頼ることは勧めません。不安で自分を追い込み続けるのは、精神衛生上よくないと思うからです。8つ目は、使いすぎないことまで含めて覚えておいてください。
努力が続かないとき、意志の弱さだけを責めても状況は変わりません。目的を言葉にする。進歩を残す。目標を小さくする。自分で決める。環境を選ぶ。力を掛け合わせる。好奇心を追う。損失回避は慎重に使う。きついことをゲーム化して、目標へ向かう過程そのものを楽しめる形に変えていきましょう。
よくある質問
8つ全部を取り入れる必要はありますか
全部を一度に使う必要はありません。今の努力がつらい理由を見て、足りない切り口を1つ試してください。たとえば進んでいる実感がなければ記録を取り、目標が遠すぎれば今日・1週間・1か月に分けます。
目的がまだ決まっていなくても始められますか
始められます。目的は仮で書き、行動しながら更新してください。僕も目的や価値観を一度で決めたのではなく、今も見直しています。
やるべきことに好奇心を持てない場合はどうしますか
目の前の必要なことは進めながら、別の場面で自然に調べ続けてしまうものを探します。すぐに見つからなくても、好奇心を探すこと自体はやめないでください。
損失回避は毎日使ってもいいですか
損失回避だけで自分を動かし続けることは勧めません。僕も避けたい未来を机に貼りましたが、不安に頼りすぎると苦しくなります。使う量を抑え、目的や好奇心、進歩の記録と組み合わせてください。
参考資料
- Yu-kai Chou「The Octalysis Framework for Gamification & Behavioral Design」https://yukaichou.com/gamification-examples/octalysis-gamification-framework/
- Schultz, P. W., et al. (2007). The Constructive, Destructive, and Reconstructive Power of Social Norms. Psychological Science, 18, 429-434. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01917.x
- Kahneman, D., & Tversky, A. (1979). Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk. Econometrica, 47, 263-291. https://doi.org/10.2307/1914185