習慣・自己管理

自己効力感を高める方法。4つの源と、いちばん大事な成功体験の積み方

2026年10月16日更新 約9分で読めます 文・福井龍介(Ryu)/POTEX株式会社 代表取締役

「自己効力感を高める方法 4つの源」の文字。カメラに向かって話すRyu

失敗してもやり続けられる人とやめちゃう人。その違いを、僕は自己効力感だと考えています。結論から言うと、自己効力感を高めるのにいちばん大事なのは、自らの成功体験です。それも、試験の合格のような大きなものでなくていい。高校野球をやっていた頃の僕は、「自分はダメなやつなんだ」と思っていました。

この記事は、僕の動画『そうやってサボっている間に、血の滲む努力をしている人がいる…【モチベーション動画】』(4万回再生)のうち、自己効力感について話した章を記事にしたものです。もう1本の動画『なぜ"あの人"はハードワークができるのか?』で、著書『なぜか努力できる人が無意識にやっていること』から紹介した内容も加えました。心理学者バンデューラの原典を開いて、4つの源の強さの違いも確かめています。

自己効力感とは、
「自分はやればできる」という感覚のこと

自己効力感とは、「自分はやればできる」という感覚のことです。心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した概念で、英語ではセルフエフィカシーと呼ばれます。結果を出すのに必要な行動を、自分ならうまくやれるという確信のことです。

バンデューラは1977年の論文で、自分にできるという見込みが、困難な場面に立ち向かう行動を左右する、という仮説を示しました。左右されるのは、行動を始めるかどうか、どれだけ努力するか、障害にぶつかってもどれだけ続けるかの3つです。論文で裏づけに使われたのは、主に恐怖症の治療の研究です(Bandura, 1977)。

失敗してもやり続けられる人とやめちゃう人。何が違うのか。意思力や努力遺伝子など、いろんな意見があると思います。僕の結論は自己効力感です。勉強や仕事でハードに頑張れる人は、やれば報われるということを心の底で理解できている人です。

この記事は動画『そうやってサボっている間に、血の滲む努力をしている人がいる…【モチベーション動画】』(4万回)をもとに構成しています。全編は24分です。

「死ぬ気でやれ」と言われても、「私には忍耐力がないから無理だ」と思う人もいると思います。でも、それは違います。どうせ無理だ、自分にはできっこないと思っているうちは、頑張れなくて当然です。それを意思力で乗り越えようとするなんて無理な話です。

もう1本の動画では、ゴールの見えないマラソンにたとえました。42.195kmで終わらず、いつまでも続くマラソンを走る気力は湧きません。それと同じで、達成できると信じられないことは、続けるのがとても難しくなります。

頑張れる人は、気合いがすごいだけではありません。心の奥底で、自分はやれば報われると信じています。これは僕の感覚的に間違いないです。

自己効力感を高める4つの源のうち、
いちばん大事なのは自らの成功体験

自己効力感を高める方法は、バンデューラの研究から4つに整理できます。自らの成功体験、他者の成功の代理体験、言葉による説得、心と体のコンディションです。この中でいちばん大事なのは、自らの成功体験です。

成功体験がいちばん大事という話には、かなり心当たりがある方も多いと思います。過去にうまくいったことがある人は、次もできるんじゃないかという気持ちに自然になるので、自己効力感が高い。ある意味、常識を科学が裏付けてくれたという感じです。残酷なことに、自己効力感は主に過去の成功体験から作られます。

自己効力感のコントロールという見出しの下に、自らの成功体験、他者の成功の代理体験、言葉による説得、体と心のコンディションの4つが並んだ動画のスライド
図1. 自己効力感を高める4つの源(動画『そうやってサボっている間に、血の滲む努力をしている人がいる…【モチベーション動画】』より)

原典では、4つの源の強さに差があると書かれています。動画で話した言い方と、原典に書かれていることを並べます。

4つの源原典での呼び方原典に書かれていること
自らの成功体験performance accomplishments自分でやりとげた経験にもとづくので、特に影響が大きい
他者の成功の代理体験vicarious experience他人との比較から推し量るぶん、自分の成功より当てにならない。代理体験だけで生まれた見込みは、弱く変わりやすいとされる
言葉による説得verbal persuasion本物の経験の裏づけがないので、自分の成功から生まれる見込みより弱くなりやすい
心と体のコンディション(生理的・感情的状態)physiological states緊張や動揺にさいなまれていないときのほうが、うまくいくと思いやすい

論文の要旨には「経験として当てになる源ほど、自己効力感は大きく変わる」とも書かれています(Bandura, 1977)。

成功体験は、
試験の合格のような大きなものでなくていい

「私には成功体験がありません」という人もいると思いますが、大丈夫です。試験に合格するとか、仕事で大きな成果を上げるとか、そういうことだけが成功体験ではありません。

目の前のやるべきことをやりきる

たとえば、いつもより1時間だけ多く自己研鑽に当てる。そういった積み重ねでも、十分に成功体験になります。過去の自分と比べて今日はできた。それで十分じゃないですか。

過去の自分と比べて今日はできたならそれで十分じゃないですか、と話している動画の画面
図2. 過去の自分と比べて今日はできた。それで十分(動画『そうやってサボっている間に、血の滲む努力をしている人がいる…【モチベーション動画】』より)

目先のゴールまで分解し、作戦を立てる

成功体験がないなら、自分で作り出してしまえばいい。2025年9月にKADOKAWAから出した僕の本『なぜか努力できる人が無意識にやっていること』に書いた考え方です。最初の一歩として理想の状態をイメージする方法もありますが、ここでは目標を分解して作戦を立てる部分を書きます。

  1. 3〜5年後の理想の未来から逆算し、1年後、6か月後、3か月後と目先のゴールまで分解して、これなら達成できそうというロードマップを敷く
  2. この方法ならできると信じられる作戦を立てる。資格試験なら予備校の学習戦略に従う、仕事なら理想を叶えている先輩のアドバイスを聞く、のように、その道のプロに立ててもらってもいい

理想から逆算した小ゴールや中ゴールを達成できる見通しが立っていれば、自己効力感は十分に高まっています。理想を分解して毎日の前進を書き残すやり方は、自己管理ができない人へ。3000時間勉強した僕の3つの脳ハックの「積み上げ日記」で詳しく書いています。

できたことに目を向けて、
自分を褒める練習をする

成功体験を積んだら、そこに目を向けます。動画では、日記を使って、できたことに目を向けて自分を褒める練習をすすめました。ネガティブなところばかり見てしまうネガティビティバイアスを軽くするのにも役立ちます。

いちばん簡単なやり方は、寝る前に、今日1日でできたこと、自分との約束を守れたことを3つだけ書き出すことです。書くことがない日は、次のような小さなことで構いません。

  • 朝一発で起きられた
  • 気が重たかったメールから返信できた
  • エレベーターを使わず階段で移動した
朝一発で起きられた、気が重たかったメールから返信できた、エレベーターを使わず階段で移動した、の3つが書かれたノートの画面
図3. 寝る前に書き出す、今日できたことの例(動画『なぜ"あの人"はハードワークができるのか?』より)

書くのは大きな成果ではなく、自分との約束を守れたことです。できたことを記録に残すやり方は、習慣トラッカーの作り方。続ける2つの仕掛けと記入例でも、スモールウィンの記録として書いています。

僕の場合は、
セルフイメージが変わって自己効力感が上がった

僕の場合は、セルフイメージを変えられたことがとても大きかったです。高校野球をやっていた頃は、自分はダメなやつなんだ、うまくいかないんだというイメージをずっと持っていました。

ただ、その後に小さな成功体験を日常で意識して、自分ができたことに目を向ける練習をしたら、次第に変わっていきました。自分って意外とできてるところあるじゃん、次もできるんじゃないか、というイメージが育まれていったんです。

自己効力感が上がる。だから行動量が増えて、実際に結果が出て、さらに自己効力感が高まる。そういうサイクルに入っていきました。

小さな成功体験から、自分ができたことに目を向ける練習、自己効力感が上がる、行動量が増えて、実際に結果が出て、さらに自己効力感が高まる循環を示す図

自己効力感を高めようと言うと、その場でマインドセットを変えることを想像する方もいます。でも、そんなにすぐ変わるものではありません。トレーニングを積んで徐々に変えていくもの、くらいの温度感で認識しておくのが正しいんじゃないかなと思います。

逆に言えば、トレーニングを積めば、かなり再現性高く自己効力感を育める。そんな可能性を示してくれているとも言えます。理想の自分を先に決めてから行動を合わせるやり方は、モチベーションが続かない人へ。行動を続ける7つの方法で書いています。

似た境遇の人の成功を見ると、
自分にもできそうな気がしてくる

自分と似た境遇の人が成功しているところを目の当たりにする。ロールモデルとなる人の伝記を読む、映画を見る。そういったことでも、自分にもできそうな気がしてきます。これがバンデューラの言う、他者の成功の代理体験です。

たとえば、未経験からエンジニアに転職できたなら、自分にもできるんじゃないか。研修で同じだった同期がここまで成果を上げているなら、自分にできないはずがない。親友が起業してうまくいっているから、自分にもできる気がする。今は理想を叶えているように見える人も、過去は自分と同じだったと肌で実感できると、自分にもできるかもと思えてきます。

原典にも、モデルとの共通点があると、その人の成功が自分に関係のある情報になり、効果が高まりうると書かれています。手本の選び方も紹介されています。恐怖症の人を対象にした研究では、器用な人が楽にこなす姿より、困難を粘り強い努力で乗り越える姿を見るほうが効果が大きかったそうです(Bandura, 1977)。

残りの2つ、セルフトークや周りからかけられる言葉による説得と、自分のコンディショニングも大事です。この2つは、また別の機会にがっつり話していきたいと思います。

よくある質問

失敗が続くと、自己効力感は下がりますか

下がることがあります。バンデューラの論文では、成功は自分にできるという見込みを高め、失敗のくり返しは見込みを下げると書かれています。特に、失敗が早い段階で起きた場合です。一方で同じ論文は、成功をくり返して見込みが強くなったあとは、ときどきの失敗の影響は小さくなりやすいとしています。努力で乗り越えた失敗が、かえって粘り強さを強めることもあるそうです(Bandura, 1977)。

子どもの自己効力感も、同じ方法で高められますか

目先のゴールを置く方法には、子どもを対象にした実験があります。算数が苦手で興味もなかった7〜10歳の子ども40人を、目標の置き方を変えた3つのグループと、自習をしない比較のグループに分けました。引き算の自習を1回30分、7回行い、「毎回少なくとも6ページ」という目先の目標を提案されたグループは、学習が速く進みました。自己効力感と算数への興味も育っています。「7回目までに42ページ全部」という遠い目標だけでは、はっきりした効果は見られませんでした(Bandura & Schunk, 1981)。目標は大人が決めて渡すのではなく、子どもが自分で選べるように提案されていました。

人に「できるよ」と言われても自信が持てないのは、なぜですか

バンデューラの論文では、つらい状況にうまく対処できない経験を長く重ねてきた場合、言葉で生まれた「できる」という見込みは、それを打ち消す経験で簡単に消えてしまうと書かれています。一方で、うまく動くための手助けと組み合わせた説得は、手助けだけの場合より大きな努力を引き出しやすいそうです(Bandura, 1977)。

まとめ

自己効力感は、「自分はやればできる」という感覚です。失敗してもやり続けられる人とやめちゃう人を分けるのは、この感覚だと僕は考えています。4つの源の中でいちばん大事なのは、自らの成功体験です。

  • 成功体験は、試験の合格のような大きなものでなくていい。目の前のやるべきことをやりきる
  • 理想を目先のゴールまで分解し、できると信じられる作戦を立てる
  • 寝る前に、今日できたことを3つ書き出す。自分を褒める練習をする
  • 自己効力感は、トレーニングを積んで徐々に変えていくもの、くらいの温度感で考える
  • 似た境遇の人の成功を見ることでも、自分にもできそうな気がしてくる

やることは1つだけです。今日は小さな成功体験を積んで、そこに目を向ける練習にフォーカスしてみてください。動画では、この話の前に、やる気が上がる名言をまとめて紹介しています。

出典

  1. Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191-215. https://doi.org/10.1037/0033-295X.84.2.191
  2. Bandura, A., & Schunk, D. H. (1981). Cultivating competence, self-efficacy, and intrinsic interest through proximal self-motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 41(3), 586-598. https://doi.org/10.1037/0022-3514.41.3.586

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