ファインマンテクニックとは。
人に説明するつもりで紙に書く4ステップ
ファインマンテクニックとは、理解したいテーマについて知っていることを、何も見ずに人に説明するつもりで紙に書き出し、説明できなかった部分を調べて書き足し、最後に子供でもわかる簡単な言葉で書き直す勉強法です。
名前の由来は、物理学者のリチャード・ファインマンです。1965年にノーベル物理学賞を受賞しています(ノーベル財団の受賞者ページ)。やることは、次の4つだけです。
| ステップ | やること | 見ていいもの |
|---|---|---|
| 1 | 紙の一番上に、理解したいテーマを1つ書く | なし |
| 2 | 知っていることを、人に説明するつもりで書き出す | なし(自分の記憶だけ) |
| 3 | うまく説明できなかった部分を調べて書き足す | テキスト、教科書、ウェブサイト |
| 4 | 書き足した説明文を、もっと簡単な言葉で書き直す | 自分が書いた紙 |
テキストを開くのは、ステップ3になってからです。先に自分の頭だけで書くから、どこが分かっていないかが紙の上に出てきます。
僕もこのテクニックを実践して、在学中に達成したかった目標を全て達成できました。ただ、やっている人は本当に意外と少ないです。
動画では、僕がマインドフルネスについて書いていく実演を、そのまま見られます。
この記事は動画『1日30分で僕の勉強効率が3倍になった勉強法を紹介します【簡単4STEP】』をもとに構成しています。全編は13分です。
ファインマンテクニックの前提。
理解と暗記は勉強法が違う
テクニックに入る前に、1つだけ外せない前提があります。ここを飛ばしてテクニックだけやろうとしても、効果が半減してしまいます。
勉強は、新しい概念を学ぶ、覚える、使える知識にする、の3つで進みます。これをもう一段単純にすると、2つのフェーズに分けられます。新しい概念を理解する「理解フェーズ」と、長期記憶に定着させる「暗記フェーズ」です。この2つでは、勉強のやり方が少し違います。
| 理解フェーズ | 暗記フェーズ | |
|---|---|---|
| 学び方 | 集中的な学習 | 分散的な学習 |
| いつやるか | 習ったその日のうち、遅くても翌日まで | 1日後、3日後、1週間後と間隔を伸ばす |
| 1回の時間 | 一発で時間をかける | 1回あたりの復習時間を短くしていく |
| ゴール | 核となる論点を人に説明できるレベルにする | 短期記憶から長期記憶へ移し、血肉にしていく |
理解フェーズは、短期間で集中的な学習
理解フェーズでは、短期間で集中して学習します。新しく習った論点は、すぐに復習しないと、授業中に言われたことの吸収率が落ちるからです。せっかく2時間の授業に出ても、復習が1週間後では、先生が言ったことはほとんど忘れています。
だから一度習った論点は、できればその日のうち、遅くても翌日までに集中的に復習します。わからないところをなくし、核となる論点を人に説明できるレベルにまで理解することが大事です。ここではこれを集中的な学習と呼びます。一発で時間をかけて勉強する、という意味です。
暗記フェーズは、間隔を伸ばす分散的な学習
暗記フェーズでは、分散的な学習をします。1日後、3日後、1週間後と復習の間隔を徐々に伸ばし、1回あたりの復習時間は短くしていくやり方です。
どれだけ集中して理解した論点でも、時間が経てば忘れます。そこで学習を一定の頻度に分散させて、短期記憶から長期記憶へ移していきます。学んだ内容をテストや日常で使えるように、血肉にしていくのがここでのゴールです。受験期の復習の間隔をさらに細かく分けた表は、簿記ゼロから会計士試験に受かるまでの、癖のある勉強法8選に載せています。
先に大事なのは、理解フェーズのほう
理解と暗記を分けるなんて当たり前だろう、と思うかもしれません。ところが実際には、授業の翌日にわからなかったことを「これからいっぱい勉強するし」と放置しがちです。1ヶ月前に習った論点が腑に落ちないまま、「もう面倒だし丸暗記しちゃうか」となることも起こりがちです。重要でない論点なら、それでもOKです。ただ、根幹となる重要概念で1回でもこれをやってしまうと危険です。
2つのフェーズは、密接に関わり合っています。しっかり理解するから暗記しやすくなり、暗記しているものが増えるほど理解もしやすくなる。それでも、どちらが先に大事かと聞かれたら、理解フェーズの集中的な学習だと断言できます。最初に徹底的に理解しておかないと、その後の暗記の効率がとても悪くなるからです。
僕が合格した公認会計士試験の代表科目、財務会計論では、細かい枝葉の論点をたくさん覚えます。その大元になるのが、複式簿記の理論と、貸借対照表と損益計算書の関係性です。そもそも財務諸表は誰のために、何のために作るのかという目的も、大元に入ります。この辺りを人に簡単な言葉で説明できるレベルで理解しておくと、その後の細かい枝葉の論点が腑に落ちやすくなります。
理解が深まるほど、暗記にかけるコストと時間を抑えられます。これは会計士試験に限らず、全ての試験に共通する基本概念だと思います。ファインマンテクニックは、この理解フェーズで使う方法です。
ファインマンテクニックのやり方4ステップ。
マインドフルネスで書いた例
動画で実際に書いたものを見せながら、4ステップを順番に書きます。手元にペンがあれば、一緒にやってみてください。
ステップ1. 紙の一番上に、理解したいテーマを書く
紙を用意して、一番上に理解したいテーマを書きます。選ぶのは、今勉強している重要論点や、他の論点に通ずる重要概念を1つです。動画では、僕はマインドフルネスを試しに書きました。
ステップ2. 何も見ずに、人に説明するつもりで書き出す
次に、そのテーマについて知っていることを書き出します。書き出すときのポイントは2つです。人に説明するつもりで書くことと、子供でもわかるぐらいシンプルな説明を心がけること。
この2つを意識して、何も見ずに、自分の記憶だけを頼りに書いていきます。「あれ、なんだっけ」と記憶をたどりながら、ある程度時間をかけて進めてください。
ステップ3. うまく説明できなかった部分を調べて書き足す
もうこれ以上説明できない、というところまで来たら、うまく説明できなかった部分を調べて書き足します。普段使っているテキストや教科書、ウェブサイトを開くのは、ここが初めてです。100%の説明を自分の頭だけでやるのは、基本的には不可能だと思います。
説明できなかったけど大事だな、ここが抜けていたな、というところを、どんどん書き足します。説明できていた部分でも、表現が分かりにくかったり不十分だったりするところは直します。
どこまで細かく書くかは、目的によります。受験や資格試験のためにやっているなら、言い回しや詳細情報までわりと細かめに網羅していくのがおすすめです。単なる知識のインプットのためなら、細かいところは気にしなくても大丈夫です。この粒度は、ご自身の感覚で決めてください。
ステップ4. もっと簡単な言葉で書き直す
最後に、書き足した説明文を読み直して、もっと簡単な言葉でシンプルに書き直します。このひと手間が、意外にとても大事です。
専門用語は極力使わず、子供でもわかる簡単な説明にします。自分にとって腑に落ちる言葉を使うことも大事です。この書き直しを再言語化と言います。
動画の紙で、何が変わったかを見てみます。最初に何も見ずに書いた1行目と、書き足して書き直した仮の完成版を並べました。
| 段階 | 書いた内容(画面の手書きを写したもの) |
|---|---|
| ステップ2で最初に書いた1行目 | マインドフルネスとは、今この瞬間をあるがままに認め、目の前のことに集中することを指す概念 |
| 仮の完成版の1行目 | マインドフルネスとは、今この瞬間に体験していることに気づいて、それを判断せずに受け入れる方法 |
| 仮の完成版で足された説明 | 「良い」「悪い」「好き」「嫌い」といった判断をせず、「文句を言う人がいる」「勉強が面倒と感じた自分がいる」といった事実をただ観察するようなイメージ |
最初の1行目は、抽象的な言葉だけで書かれています。仮の完成版では、判断せずに受け入れるとはどういうことかを、身近な場面に置き換えています。
なお、マインドフルネスには様々な定義や側面があり、動画で書いた内容はあくまで一例です。テーマにしたマインドフルネスそのものの実践は、1000日続けている瞑想のやり方と4つの手順に書きました。
ファインマンテクニックのメリット。
説明できて、理解度が見える
ファインマンテクニックには、アクティブラーニングの鉄板2つ、再言語化と想起が組み込まれています。簡単な言葉に書き直すのがステップ4、何も見ずに記憶をたどって書き出すのがステップ2です。
人に教えるつもりで勉強するのも、僕がいつも激推ししている勉強法です。物事を一番理解しているのは、教わる側の生徒ではなく、教える側の先生です。先生は生徒に比べて5倍から10倍以上理解していないと、分かりやすく説明できないと僕は思っています。
僕も、YouTubeで勉強法の解説をするようになってから、初めて自分の中で勉強法がきれいに体系化されていきました。勉強法や生活習慣の知識を、新しく膨大にインプットしたわけではありません。人に教えるというアウトプットを繰り返すことで、単純に整理されていったのです。
もう1つの大きなメリットは、自分の理解度を客観的に把握して、その後の復習を効率化できることです。自分が理解できていないところを明確に認識するのは、勉強の基本中の基本です。紙に書き出せば、ステップ3まででどこが定着していて、どこが定着していないかが一目瞭然になります。
それによって、復習の濃淡を自在に変えられます。論点や自分の理解度に応じて、復習の頻度を最適化できるようになるということです。
ファインマンテクニックの効果を上げる2つの付け足し
4ステップで終わってもいいのですが、それだとちょっとだけもったいないので、2つ付け足します。1つ目が感情を利用すること、2つ目が実際に人に説明することです。
1. 感情を利用する
小学生ぐらいのころの思い出で、今パッと浮かぶ話はありますか。思い浮かんだ話には共通点があります。悔しい、嬉しい、恥ずかしい、面白いと、何かしらの感情が強く動いていることです。そういう場面は、何年経っても忘れずに脳裏に焼き付きます。勉強も同じです。
勉強で感情を動かすのは話が違う、と思った方も多いと思いますが、これは工夫次第でどうにでもなります。僕がよくやっていたのは、ステップ2で書き出しているときに「あれ、なんだっけ。思い出せない、悔しい。テキストのあの辺に書いてあった気がするのに、うまく言葉にできない」と悔しがることです。
そしてステップ3で答えを見たときに「これだ。なんでこれが出てこなかったんだ」と、ちょっと自分が嫌になるぐらいオーバーリアクションでやってみる。最初は意図的でもいいので、勉強の中で感情を動かすことを意識してみてください。だんだん意識しなくても、勉強の中で感情が動くようになっていきます。勉強という単調な作業に、ちょっとスパイスを加えるイメージです。
2. 実際に人に説明する
2つ目は、実際に人に説明することです。これは正直、時間がある人だけで大丈夫です。やってみないと効果はわからないと思います。
この記事の4ステップは、人に伝えるための準備、いわばプレゼンの資料を作るところまでで終わっています。実際に人に説明するところまでやりきると、理解のレベルがまた一段と上がります。実際に人に説明するときの緊張感や、その時にしか鍛えられない筋肉みたいなものがあるんだと思います。
人に説明する効果の話は、いつもと違って僕の感覚的な部分のシェアです。海外の勉強系YouTuberの方も同じことを話していたので、もしかしたらそうなのかもしれないと思って紹介しました。
使うのは重要な論点だけ。
ファインマンテクニックは必殺技
僕は、ファインマンテクニックを1日30分やるだけで、体感で勉強効率が3倍になりました。ただし、守ってほしいルールが1つだけあります。重要じゃない論点では、ファインマンテクニックを使わないことです。
ファインマンテクニックは、効果が大きいぶん手間がかかります。理解フェーズは集中的な学習なので、これぐらい集中的にやるのが理想です。それでも、全ての論点でやっていたら時間がなくなってしまいます。僕も最初にやったとき、あまりに効果を実感して色んな論点でやろうとしましたが、結局、時間がないことに気づきました。
どこで使うかは、ステップ1でテーマを選ぶときと同じ基準で決めます。今勉強している重要論点や、他の論点に通ずる重要概念です。財務会計論でいえば、細かい枝葉の論点ではなく、複式簿記の理論や財務諸表の目的のような大元の部分です。使うところを間違えないように、ここぞという時に、必殺技として使ってください。
よくある質問
書き出しには、どれくらい時間をかければいいですか。
論点にもよりますが、動画でマインドフルネスを書いたときは、ステップ2の書き出しに僕は10分ぐらいかけました。好きな時間をかけて大丈夫なので、自分のペースでやってみてください。
紙とiPad、どちらに書けばいいですか。
基本は紙とペンですが、iPadがある人はiPadのノートでも大丈夫です。紙に書くなら、大きめの紙を用意してください。動画の実演は、iPadのノートに書いています。
やってみたら、結構大変でした。
そのぶん、その論点についての知識は深まっているはずです。
説明する相手がいないときは、どうすればいいですか。
声に出して説明したいときは、人形を相手にする方法もあります。やり方は、癖のある勉強法8選の4つ目にまとめました。
まとめ
ファインマンテクニックは、理解フェーズで使う勉強法です。
- 勉強は、理解フェーズ(集中的な学習)と暗記フェーズ(分散的な学習)に分けられる。ファインマンテクニックは理解のほうで使う
- テーマを書き、何も見ずに人に説明するつもりで書き出し、調べて書き足し、子供でもわかる言葉で書き直す
- ステップ3まで終えた紙を見れば、どこが定着していないかが分かり、復習の濃淡をつけられる
- 手間がかかるので、使うのは重要な論点だけ
僕は、勉強のやり方を変えたことで人生が変わりました。凡人でも、ちょっとした知識1つで結果は変わります。ただし、効果には個人差があり、合う合わないはどうしても出てきます。自分で試して、これだと思うものを1つや2つ、3つ見つけてください。
出典
- The Nobel Prize in Physics 1965. NobelPrize.org(ノーベル財団). ノーベル財団の受賞者ページ(1965年物理学賞)